昼食を終えた静かな午後。
天気も良く、今日は比較的外も暖かそうな気候だ。
洗い物を終え紅茶でも淹れようと
ブランドごとに綺麗に並べられた缶を見てどれにしようかと暫く悩む中
七海さんが読んでいる英字経済新聞が静かにめくられる音が時折聞こえる。
インターホンが鳴り
配達予定の物がないこういう時は大抵は五条さんだろうなと思い彼を見ると同じ事を思ったようで、先程までの穏やかな表情から薄らと眉間に皺が寄った。
『私出るね』
『お願いします。五条さんだったら居留守で良いです』
『多分、開けるまで押し続けると思うよ』
その状況を想像したら笑ってしまったが
モニターの画面を見ると、意外な人物が1人そこに立っていたので驚いた。
『あれ…野薔薇ちゃん?』
流石に彼も驚いたようで、新聞をテーブルに置いて立ち上がった。
モニターに映る彼女は顔面の左を抑えて、少し俯いている。
急いで玄関へと行きドアを開け、迎え入れた彼女を見て更に驚いた。
『…転んだ』
そう短く伝える彼女にはいつもの快活さはなく、口をきつく結び涙を堪えてるような姿はまるで小さい子供のようだった。
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『瞼が切れたりとかは無さそうだね』
衣服はそこまで破けたり汚れたりはしていないもののどうやら前のめりに躓いたらしく
持っていた買い物の品を庇った為に手がつけず、反射的についた膝と左頬より少し上に擦り傷が出来ていた。
顔をぬるま湯で洗い、消毒をして応急手当てをした。
『いやー、ちょっとパニクっちゃって…そういえばこの辺、七海さん達の家あったよなぁって思い出して』
『何事かと思いましたよ、大きな怪我に至らず良かったです』
『すんませーん……』
『顔に跡が残ったら大変だから、念の為診てもらった方がいいね』
『家入さんに連絡しておきますから、後ほど行ってください』
『はーい』
気分も落ち着いたようで、野薔薇ちゃんはいつものようにソファで寛いだ。
『やっぱり良いなぁ、私もこういう家に住んで自分の好きなものだらけにしたーい』
先週見つけた洋梨の紅茶を淹れて彼女に出すと、とても気に入ったようだった。
『このカップも可愛いし、家具も全部いい!しかも七海さんがいつも居るって安心感がハンパない…』
うんうんと一人納得しながら紅茶を飲む。
『紅茶飲むと思い出すんだ、小学生の頃初めて飲んだの』
野薔薇ちゃんは、懐かしそうにカップに入った紅茶を見ていた。
『私が小学生の時の話なんだけどね、』
『うん、聞きたい』