「シギル!」
王都城内へと数か月ぶりにシギルは両親へ会いに出向いた。
ルシス王国と他国を繋ぐという外交に務めている両親は多忙であり、一か国になかなか留まれない。
幼稚園までは両親もインソムニアに身を置きながら仕事が出来ていたので、よく王都城へと来てはノクトやイグニスと共に過ごし
小学校からは両親が跨ぐ国の数も増え、シギルも時折長期の休みにはついて行きつつ小学校生活を終えた。
中学三年間は、シギルを一人置いて行きたくないという母の強い気持ちからインソムニアを出て名目上は留学として、各国を共に渡った。
「マ...お母さん、お父さん!おかえりなさい」
数か月ぶりに、末娘の元気な顔を見て両親は共に喜んだ。
「お母さんだなんて、ママ呼びじゃなくなるのは何だか寂しいわね〜」
「まぁ、そうだな。シギルも高校生になったしな...」
心地よい日差しが差し込む大理石の廊下を両親と共に歩きながら近況を伝えた。
「学校は慣れたのか?」
「うん、ノクトやプロンプトも一緒のクラスだよ」
「まぁ、あのメガネの子?ノクティス王子も一緒なら心強いわね」
「よく放課後ノクトのマンションに行くんだけど、イグニスにも久しぶりに会ったよ。よく夕飯作ってくれる」
「この間我々も久しぶりに彼を見かけたな。話す時間はなかったが立派に成長して...王子の側付に相応しい出で立ちだったな」
そんな話をしながら歩いていると、後方からドアが開く音が聞こえ懐かしい声が呼んだ。
「シギル」
低く優しいその声の方へと振り返ると、にこやかな笑顔で見つめるレギス国王陛下の姿があった。
国王陛下...ノクトの父親だ。
「あ、陛下!」
シギルは慌てて膝を折り、頭を垂れた。
「久しぶりだな、王都城へと来るのは。こんなに素敵な令嬢となって...」
レギスの少し後ろの位置で、イグニスの叔父にあたるスキエンティアが微笑みながら頷きその光景を見ていた。
「シギル、君のご両親には本当に感謝してもしきれない。国の為に日々力となってもらっている」
「身に余るお言葉です、陛下」
両親は共に頭を下げた。
「ノクティスの事も、これからもよろしく頼む」
そう言ってシギルの肩に手を置き、レギスはスキエンティアと共に次の公務へと向かった。
「そうだ、シギル。私達ね、オルティシエに邸宅を買ったの」
突如思い出したように母が言った。
「え!?オルティシエに?」
水の都と呼ばれ、多くの観光客で年中賑わう美しい都市オルティシエには一度行ったことがあった。
「そう、とってもいい場所なのよ。ね?アナタ。」
「あぁ、我々の住まいでもありルナフレーナ様ご一家も過ごされる場所でもあるんだ」
「そ、そうなの?なんでまたそんな...」
「あの場所を拠点にするのが一番立地的にも良いのよ。各国の会議をするのにも集まりやすいでしょう?ルナフレーナ様のお母様のシルヴァ様からの御厚意で、ね」
はぁ、と気の抜けた声を発してしまった。
10歳年の離れた双子の兄姉は共に結婚をしてそれぞれ家庭を持っている。
今後は実家はオルティシエです!と言うのだろうかと考えてしまった。
「それでね、シギル。あなたも一緒に私達と来ないかしらと思って」
「今?まだ入学して数か月の今!?」
相変わらずの母のマイペースぶりは未だに驚かされる。
「いや、今すぐじゃなくていいんだ。来年度でも卒業してからでもいい。勿論気が変わってすぐにと言う気持ちになったら手筈を整えよう」
うん、と俯き加減に答えたシギルを見て母は肩に手を添えて話を続けた。
「お兄ちゃんもお姉ちゃんももう結婚しているでしょう?あなた一人を置いて行くのが何だかやっぱり気がかりで...」
遠慮がちに言う母にハッとした。
「ママは寂しいんだよ、お前と離れてるのが」
そう言って父親は笑った。
「でもね、シギル。あなたが今充実して幸せならいいのよ。困らせるつもりはなかったの...あ、でも夏休みはオルティシエで一緒に過ごせるわよね?」
最後までマイペースぷりを崩さない母を見てシギルは苦笑いを零した。