≪シギルが先に部屋に居るからよろしくな≫

ノクトからの連絡を受けて、イグニスは夕食の材料を調達してすぐにマンションへと向かった。

玄関へ入るとシギルの靴が揃えて置いてある。
リビングに入るが姿が見当たらず不思議に思っていると、ソファの下から顔を上げたアンブラと目が合った。
そのすぐ側にクッションを枕にすっかりと眠りこけているシギルの姿があった。

荷物を一旦テーブルへと置いてからイグニスはシギルの元へと行き、肩にそっと手を当て揺らした。

「シギル、寝るならソファか客室のベッドにしないと体を痛める」

「ん....ぅ....」

すうっと大きく息を吸いゆっくりと瞼が開いたが、寝ぼけ眼なのが分かる。

「ほら、シギル...」

上半身を起こそうと頭とカーペットの間に腕を入れた瞬間、両腕が首に絡み抱き着かれた。

「イグニス...だっ...こ」

夢を見てるのか、小さい頃によく強請っていたような口調でくっついてくる姿に思わず笑ってしまいそうになる。

「シギル」

背中を軽く擦り、そのまま抱きかかえ起こそうと思ったが気持ちよさそうな寝顔を見て元の通りに横たえらせた。

自分の腕にシギルの頭を乗せ、イグニスも一緒に横になった。

もう片方の腕を背中に回すと、すっぽりとシギルの身体は自分の胸の中に収まり心音と温かい体温が伝わってくる。
ぎゅっとシャツを握るシギルの行動は昔から変わらない。

自分自身も、反射的に小さな子供へ母親がするように背中をトントンとする癖が抜けていなかった。

若干寝不足だったのもあり、イグニスもとろとろとそのまま眠りの中へと入ってしまった。
二人の頭上にはアンブラが相変わらず伏せをして眠っていた。


夢現、小さい頃のノクトの声とシギルの笑い声が聞こえた気がする。

懐かしい、思い出すのはいつもあの頃だ―。




「あー、つっかれたぁ〜〜〜シギルもイグニスも待ちくたびれたかな?」

プロンプトは肩を落とし、顔を上に向けながら言った。

「お疲れさん。テストでもうちょいマシな点数取りゃ補習は免れるよなぁ」

帰り道、ノクトのマンションへと向かっていたグラディオも合流した。

「ねみぃわ...」

部屋の前に着き、ドアを開けるとアンブラがお座りをして待っていた。

「っと...お前!」

ノクトはアンブラの顔を両手で包むように撫で、背中に合ったルナフレーナからの手帳を受け取り、アンブラはすぐにドアから出て行った。

「不思議な存在だよなぁ...」
グラディオはその後姿を見てしみじみと言った。

「ねーノクト、言わないだろうけどそれって何?」

「わかってんなら聞くなっつーの」

リビングのドアを開け入るや否や、ノクトはすぐに二人に制止の合図の手を出しグラディオもまたプロンプトの口元を抑えた。

「うぐっ...」

(ぜってー音立てるなよ、声出すなよ!)

ノクトが小声で言うと二人は首を上下に振って頷いた。
三人の視線の先には、カーペットの上でぐっすりと眠るイグニスとシギルの姿があった。

(なんか掛けてあげなくていいの!?)
(アイツ目ぇ覚ますからな...このまま一旦出るぞ)

そっと三人はリビングを後にしてマンションを出た。



「30分くらいしたら戻るか」

「ってか、シギル...抱き枕みたいになってたね」

グラディオとプロンプトの会話を聞きながらノクトは少し後ろを歩いていた。

「どうした?」

歩みを止め、グラディオが聞いてきた。

「いや...イグニスのあんな無防備な姿、見ねーなと思って」

どことなく嬉しそうな、照れ臭そうにして顔を俯けてるノクトを見てグラディオとプロンプトは笑った。

「眠気覚ましのエボニーコーヒーでも買って行ってやるか!」

「だね〜!シギルは眠れなくなっちゃうから甘いものにしようよ」

夏から秋へと季節は移りつつも暑さはまだまだあり
セミの鳴き声が響く中、3人はマーケットへと向かって歩いた。



In Love Again