「ねぇ…」
暑い日差しが燦々と降り注ぐ午後の時間。
クーラーが効いた涼しいノクトのマンションにて夏休みの課題をそれぞれやっていた。
「海、行きたくない?」
顔をテーブルに突っ伏して、イグニスが入れてくれたアイスティーの氷が溶ける様子をぼんやり見ながらふとプロンプトが言った。
「あ、いいねぇ海!」
「シギルの両親から貰った釣竿で釣りしてぇわ」
参考書を持ったままチラリとシギルはプロンプトに笑顔を向け、ノクトは数学の問題に苦戦している。
「シギルもプロンプトも、日焼け止めをしっかり塗らないと後で大変なことになるな…ノクト、そこ間違っているぞ」
「うぇっ…マジかよ」
各部屋の掃除を終えたイグニスが3人が囲うテーブルへとやって来た。
「たまに日焼け止め塗るの忘れて外出しちゃうんだよね〜…気をつけないと」
「もう!俺、真面目に言ってるんですけど!」
「あ、プロンプト!そこスペル間違ってるよ」
「えっうそ!どこどこどこ!?」
「課題に集中しろよ…」
ソファで本を読んでいたグラディオが目線をプロンプトに向けて苦笑した。
「だーーってさぁ、もうすぐ夏休み終わるんだよ?まだ海行ってないし、可愛い彼女出来てないし…」
口を尖らせながらアイスティーをストローで飲むプロンプトを見つめシギルはおもむろに聞いた。
「プロンプトは、彼女作りに海行きたいの?それともノクトや皆んなと夏の思い出作りしたいの?」
「えっ…!?」
不意の問いかけに驚きシギルの顔を見ると、無邪気な瞳がキラキラと見つめている。
本人は無意識なのだろうけど、この見つめ方は場合によっては勘違いする男も出てくるだろう…。
「そ、それは…ノクトやシギルや皆んなと夏の思い出作りしたいよ!」
「なるほど〜!もしも海行って可愛い彼女作りたいんだったら、私たちじゃなくてグラディオと行った方が早いもんね」
「確かにな!」
「どういう意味だよ…」
笑い合うノクトとシギルを見てグラディオは溜息をついた。
「グラディオってなんでそんなにモテるの?なんか、自然と女の人がふら〜っと寄ってきてる気がするよね」
プロンプトとノクト、グラディオが話し込んでいるのを横目で見ながらシギルはイグニスにそっと尋ねた。
「ねぇ、イグニス。やっぱりノクトは海に行くのは難しいの?あぁいう....海の家とかあるような賑やかな感じの場所」
「そうだな...」
クラスの中で今年の夏は皆で海に行こう、という計画が女子たちの中で上がっていたのだ。
シギルはプロンプトとノクトに声を掛けて欲しいと言われていたのだが、どう切り出そうか悩んでいた。
今でさえ、ノクトの行動は把握されて遊園地やショッピングモール、カフェに行くのにも離れたところに護衛の存在はあるのは知っている。
一国の王子だから仕方はないのだが、よく一人暮らしが許されたとシギルは思った。
「海、お前とプロンプトだけでも行って来いよ」
ノクトは借りていたノートをシギルの頭に乗せながら言った。
「ノクト...」
隣に座ったノクトを見てシギルは何とも言えない気持ちになった。
イグニスは何かを考えているような顔つきだった。
「イグニス、ど〜〜してもだめかな?」
「いいって、シギル」
ノクトは苦笑いを零しながら軽くシギルの頭を小突いた。
「通るかどうかは分からないが...一応提案してみよう。行く海は決まっているのか?」
「うん、クラスの女子が調べてくれていて...」
「え、なになに!?海計画あったの〜〜〜!?言ってよシギル〜〜〜」
エリアの名前を聞いてイグニスは頷いた。
「明日、聞いてみよう」