「は〜、さっすが王家....なるほどね〜.....」
数日後、雲一つない快晴に恵まれ太陽の光を浴びて海面はキラキラと輝いていた。
ビーチにはクラスメイトほぼ全員とその家族で賑わっていて、あちこちで楽しい声が響いている。
「貸し切りにしたってわけか」
成程、と感心しながらグラディオが辺りを見渡した。
クラスメイトだけではなく、王都城で働く者達とその家族も一緒なのでより一層の賑わいを見せている。
ビーチの入り口には護衛が立ち、一般客は今日は立ち入り禁止という事を伝えていた。
「ね、シギル...あの人達絶対インストラクターとかライフセーバーの人達じゃないよね?ね?」
「ん?」
大きな樽に氷を敷き詰め、ペットボトルの飲み物を入れていたシギルはプロンプトにそう言われた方角を見ると『王の剣』の何人かも来ていた。
万が一に備えてなのだろうが、太陽に照らされ浮かび上がる肉体は明らかに護衛やライフセーバーではないだろうという事がわかる。
「あ〜....特殊部隊の人達だね!」
「特殊部隊ぃ!?は〜....今日は何が起きても万全な気がする...イグニスとグラディオも居るし」
「頼むから溺れない様にしてくれよ」
グラディオは海の家のカウンターで足を組みながら座り、きゃっきゃとはしゃいで通り過ぎる女子たちを見ていた。
「グラディオ...」
イグニスとプロンプト、シギルが向ける若干白けた視線にグラディオは苦笑いをした。
「さすがに王子の御学友には手を出せねーだろうよ...」
シギルはニックスが居る方に目を向けた。
気づいたニックスは軽く会釈をするような素振りをして、口元は少し笑っているようにも見えた。
◆
「どうした?ニックス...あぁ、ウィンクルム夫妻の娘も一緒か。へぇ、5年後が楽しみになる成長を遂げたな」
ルーチェの言葉に鼻で笑い、ニックスは不審者や変わったことがないか辺りを見渡した。
「おっと、お嬢さん達。あんまり向こうには行かないでくれよ、立ち入り禁止のエリアだからね」
ルーチェが軽くウィンクをしながらそう言うと恥ずかしそうにしながら海の方へと行った。
「可愛いねぇ、はしゃいじゃって」
「ルーチェ...」
呆れた視線を向けたニックスに両手を上げておどけた様なポーズを取る。
「目の保養だろ?王子の御学友にはさすがに手は出せないな...ま、向こうから来たら断る理由もないが」
はいはい、と言わんばかりの無言の視線を向けた。
「ぴちぴちのお肌には敵わないわよねぇ...羨ましい限り」
クロウはスポーツドリンクを二人に投げる様に渡した。
「アンタ、そう言う趣味あったっけ?」
からかう様にルーチェに向かってそう言い、クロウは一口ドリンクを飲んだ。
「あー、ちょっとお嬢ちゃんたち。そっちはダーメ、危ないからね。向こうのエリアだけにしてちょうだい」
クロウの様子を見てニックスは鼻で笑った。
◆
「ん〜!いい匂い!夕飯の準備?」
木の造りのカウンターの中には王都内で働くシェフたちがバーベキューの下準備をしていた。
人数が人数なだけに、食材の量も晩餐会がある時かそれ以上だ。
「あぁ、賑やかになるだろうな今夜は」
イグニスも今日ばかりは手を休め、ノクト達に付き添っている。
「イグニス、海にこうやってゆっくり来るのもすごく久しぶりじゃない?」
「そうだな、子どもの頃以来だな」
うんうんと頷くシギルの肩付近が気になり視線を向けた。
水着の上からUVカット仕様の夏用パーカーを羽織ってはいるが、案の定日焼け止めの塗が甘かったからか既に肩紐の部分が赤くなっている。
「ね〜〜〜〜〜シギル、ノクト釣りに夢中で全然ビーチボールとかに参加してくんないの!折角だしシギル行こうよ〜」
カウンターに雪崩れるようにやって来たプロンプトにそう言われ浜辺に視線を向けると、クラスメイトの女子がビーチボールを高く掲げて大きく手招きをした。
「うん!じゃあ行こうかな」
パーカーをカウンターに置き浜辺に向かって駆け出そうとしたシギルの手を反射的にイグニスは掴んだ。
「待て、シギルっ...日焼け止めをもう一度塗らないと肩が火傷みたいにな...」
突然強く手を引かれ何事かと目を丸くし驚いてると、イグニスはしまった...という表情をしてそれを見ていたグラディオが耐え切れずに吹き出した。
「ちょっと...待てよ、母親じゃあるまいし...」
腹を抱えて笑う、という表現がぴったりな様子で笑い続けている。
「はははは!優しいね〜イグニスは、確かにシギル肌白いし皮膚薄い感じだもんね〜」
俺も〜、とプロンプトも塗り直しシギルもそうした。
「...すまない」
「え!?いいよ、嬉しいし」
ニヤニヤと二人のやり取りを見つめるグラディオをなるべく視線に入れないようにして、イグニスはシギルの言葉に控えめに笑った。
「シギル−−−−!プロンプトーーーー!王子がおっきい魚釣りそうだってーーー!」
クラスメイト数人が大きな声で呼び、飛び跳ねながら早く早くと二人を呼んだ。
「うっそ!?行こ、シギル!」
プロンプトは座ってるグラディオを立たせて駆け出した。
「イグニス、私たちも行こう!」
シギルはイグニスの手を握り皆が走っていく方向目がけた。
子どもの頃に、海でノクトがイグニスの手を取り走り出した姿とリンクする。
シギルの両親からの誕生日プレゼントで貰った釣竿を使って早速大物を釣り上げそうなノクト。
「やっべぇ、俺夢釣ったわ!!」
クラスの男子達がバシャバシャと暴れる魚を捕まえようと海に入り、女子達は声援を送る
シギル、プロンプト、グラディオ、イグニスは満面の笑みでそう言ったノクトを見て声を出して笑い合った。
美しい夕日が浜辺を照らし、水飛沫とクラスメイト達の笑い声が響く。
「楽しそうで何よりだね」
クロウ、ニックス、ルーチェはカウンターへとやってきてその様子を笑顔で見ていた。
もうそろそろ、楽しいバーベキューの下準備も終わる頃。