「あ、その写真一枚くれ」
絨毯の上に座り、テーブルの上で写真整理をしていたプロンプトとシギルの上からノクトが声を掛けた。
「あ、これ?いいよ!5人揃ってて皆良い笑顔だよね〜!ノクティスもブサイクじゃないし」
「なんだよブサイクって...」
「いやほら、なーんかノクトって写真写りビミョーなんだよね」
「カメラマンの腕だろ」
「タイミングかなあ?」
ほらーと写真を見せるプロンプトにシギルは笑い、ノクトは「はいはい」と言いながら食卓のテーブルへと行った。
「ねね、シギル!ノクト、あのいつも手帳のやり取りしてる方へ送るのかな?」
そう言われてノクトを見ると真剣に何やら書き込み、その隣には小さな小包があった。
「うん、そうだね」
―数日前の日曜日―
trrrr.....
久しぶりに叔父叔母も揃って少し遅めの朝食を取り、食後の紅茶を飲んでいると着信があった。
『もしもしー!ノクト?珍しいね、どうしたの?』
『シギル、あー...今日ヒマ?ちょっと付き合って欲しいんだけど』
『ん?うん、いいよ!どこに行きたいの?』
『...シギルが良く買い物する店とか?』
『うん...ん?』
良くわからなかったが、とりあえず13時頃に待ち合わせることにして電話を切った。
珍しく車ではなく電車で行くのが気になったが、遠巻きに護衛が付くのはいつもの事だし大丈夫だろうとシギルは思った。
「ノクティス王子からお誘い?」
焼き立てのクグロフをテーブルに置きながら叔母が聞いてきた。
「うん、珍しいよねイグニス抜きで...」
「デートのお誘いか」
からかう様に笑いながら叔父が言った。
「まさか!私が良く行くお店に行きたいって言ってたよ」
ご馳走様、と伝えシギルは準備のために部屋へと上がった。
「女性へのプレゼントは...イグニスよりもシギルに聞いた方が的確だろうからな」
「そうね、きっと喜ばれるわね」
本人はまだわかってなかったが、叔父叔母はなぜノクティスがシギルに電話をかけてきたかすぐに理解した。
◆
「ノクトー!」
「おぉ、悪ぃ」
人通りが多い午後の都心の駅での待ち合わせ。
世の中の恋人たちはこうやって待ち合わせてデートをするんだろうかとシギルはふと思った。
「イグニスには言ったの?」
「まぁ、それとなく。車出すってうるさかったけど2人増しで護衛付けることで了解貰ったわ」
人混みの中でも、ふと斜め後ろに視線を向けるとどこに護衛が居るかはシギルには分かった。
「で、私が良く行くお店に行きたいってどういうこと?」
「あぁ、あー....クリスマスのプレゼント」
「うん」
ノクトの言葉を待ったがシギルはすぐに理解した。
「ルナフレーナ様にだね」
そういうとノクトは少し伏し目がちに頷ずいた。
ルナフレーナはノクトやシギルよりも4つ上で20歳となる。
節目でもある特別な年齢のクリスマス。
「じゃあ、早速行こう!」
まずはあそこね、と指差した方へとノクト達は向かった。
◆
16時―。
「お前....こんなに店回って買い物してんの?」
「普段は一気に回らないよ、今日は特別でしょ!だから片っ端から回ってるの」
「もー何でもよくなってきた...」
「ちょっとノクト!でも確かに疲れたね...休憩しようか?」
カフェも混み合う時間帯
シギルとノクトはフリースペースがある公園へと向かい、その中にあるキッチンカーで温かい飲み物をテイクアウトして一休みをした。
「思えばルーナって何好きなんだろうな...」
ポツリとノクトが呟いた。
「ルナフレーナ様は...」
と、幼い頃に共に過ごした時間をそれぞれ思いだし沈黙が流れる。
「紅茶は好きだよね、でもこの間ノクト送ってたし...茶器はいっぱい持ってそうだし....化粧品?何使ってるんだろう...ジュエリーとか?」
正装した時のルナフレーナを思い出すと、美しい繊細なジュエリーを付けていたような気がした。
「あ」
「どうした?」
「ノクト、おすすめの店がある!」
飲みかけのカップを持ったまま、シギルはノクトの手を取り早足で小道の方へと向かった。
◆
「ここ、住宅街じゃね?」
「そう静かなんだよね、でも綺麗なお店もあるの」
ポツリポツリと時折出てくる花屋やコーヒーショップ、菓子店を見ながらノクトはシギルの後ろを着いて歩いた。
「あ、よかった〜開いてるよ」
そう言って店に入って行ったシギル
手作りと思われる銀製の看板が掲げられ、ドアを開けると鐘の音が鳴った。
「いらっしゃいませ」
革製のエプロンをつけた女性が作業の机から立ち上がり、夫と思われる男性はノクト達を見て笑顔で挨拶をした後、再び手元にある銀板に彫りを施す作業へと戻った。
「ここね、前に一度来たことがあって...工房なんだよ」
小さな店内には銀製や金のジュエリーやアクセサリーが並べられている。
「すごいな....」
細かい透かしや彫りの模様を見て、思わずノクトも見入った。
「ルナフレーナ様ってさ、正装の時凄く綺麗なジュエリーを付けてたけど...普段って何もしてなかったなって」
シギルが一緒に過ごした期間の記憶を辿った時、いつも首元がすっきりとした服を着ていたが装飾品はなかったことを思い出した。
肌が白く、デコルテが美しいルナフレーナにはシルバー色の物が似合うのではないかとシギルは思った。
なるほど、とノクトは店内を見渡しあるネックレスが目に留まった。
三日月を象り両脇には花の文様が付いているネックレスで、月には美しい透かしが施されていた。
「これにする」
「よかった、良いのあったね!」
「シギル、どーもな」
「結構歩いたしココアも途中だったし...あとでケーキ食べに付き合ってね!」
「...おう」
ルナフレーナの名前にピッタリなそのネックレスはその後、
彼女がノクティスと結婚してからも彼女の胸元にいつも煌めいていた。