「シギル〜、明日ヒマ?ノクトと買い物行くんだけど一緒に行かない?」
抜き打ちの小テストを終えてご機嫌なプロンプトは授業終了とほぼ同時に鞄を手に取りシギルとノクトの席へとやってきた。
ノクトは欠伸をしながらゆっくりと鞄へと持ち物を入れている。
「あ〜明日は....バイトなんだよね〜」
「えっ!シギルバイトしてんの!?どこどこ、遊びに行っていい!?」
目をキラキラと輝かせながら聞くプロンプトは恐らく女子が多いという期待を盛大に込めているだろうと、シギルは笑った。
「うん、おいでよ!バイトって言ってもお姉ちゃんのお店だから手伝いみたいなものだけど...紅茶とチョコレートの専門店で、店内で食べることもできるよ」
「ね、ノクト明日早速行こうよ〜」
「しょーがねーなー...まぁ、いいぜ」
「あれ、ノクト来てくれるんだ?」
即答で断りを入れるかと思いきや、意外な返答だった。
「んー、まぁたまにはな。」
「そっか、じゃあ明日3時くらい?予約入れておくよ」
「わ〜!シギルサンキュー、ノクト絶対寝坊しないでよ!」
「そんな時間まで寝ねーわ!」
―――――――――
翌日。
「いらっしゃいませ...あ、プロンプト!ノクト!」
クラシカルな雰囲気に統一された木造の店内は休日という事もあり、賑わっている。
自動ドアが開き振り返ると、二人が買い物を終えたらしく袋を幾つか下げながらやってきた。
「すごい、結構混んでるんだね〜!しかも紅茶もチョコも種類めっちゃ多いね!?」
店内には国内一を誇る品揃えの茶葉とチョコレートが美しく並べられ、買い物客も多い。
「へぇ、意外と男の客も多いんだな」
店内を見回し、ノクトが言った。
「そうなの、プレゼントで選びに来るお客さんも多いんだよ」
「シギル、こっち向いて〜!」
振り返るとプロンプトが不意に写真を撮った。
「お店の制服可愛いね、似合ってる!」
「ありがとう〜!」
「いらっしゃいませ、あらシギルのお友達?それとも...どちらかは彼氏〜?」
店長、と呼ばれた女性がからかい気味にシギルを肘で小突いた。
「違います―!二人ともクラスメートで幼馴染..です!」
「これは失礼いたしました!サービスしちゃうからゆっくりしていってね」
太陽のような笑顔を見せながら、ノクトとプロンプトに手を振った。
シギルはチョコの種類や紅茶の種類を軽く説明しながら予約席へと二人を案内した。
プロンプトは真剣に耳を傾けていたが、少し後ろを歩いていたノクトはすれ違った同じ年頃の男子二人の会話が気になった。
「なぁ、今のスタッフの子めちゃ可愛いよな」
「金髪と話してた子?」
「そう、終わり何時だろ?連絡先交換してくれるかな」
そんな会話が耳に入り、ノクトはシギルを呼び止めた。
「シギル、お前今日バイト何時まで?」
「5時に上がる予定」
「そか。イグニス来るし、夕飯食ってけば?」
「...?うん、じゃあお邪魔しようかな」
「あーあと。紅茶選びたいから後でよろしく」
「っえーーー!ノクト誰かにプレゼント!?誰、誰!?陛下!?」
席に着きながらノクトが言い、プロンプトが前のめりに声を大きくして言う。
「なんでもねーよ、つか声でかいし...」
なるべく周りから離れたテーブル席に案内したが、プロンプトの声は意外とよく通る。
「いらっしゃいませ、こんにちは」
そんなやり取りをしていると、スーツを着た女性がやってきた。
「あ、お姉ちゃん」
「え?あ!シギルのお姉さん、お久しぶりです!」
「ども..」
「二人とも、すごく久しぶりね〜カッコよくなっちゃって!ゆっくりして行ってね」
シギルの姉は、挨拶を済ませると直ぐに奥の買い物客の方へと向かった。
「お姉さん、久しぶりに会った〜相変わらず綺麗だね〜」
「ありがとう!伝えておくね、喜ぶよ」
「ここはシギルの姉さんの店ってことか...兄さんはまた別なのか?」
「そう、ここは姉の店で兄は別な仕事を持ってるよ。でも二人とも輸入関係の仕事っていうのは共通かな〜。」
シギルには10歳年の離れた双子の兄と姉が居て姉は昔から好きだった食に関連すること、とりわけ紅茶とチョコレートに特化した店を持つことを昔から決めていたのだ。
兄は機械関連の輸入に関する仕事で、両親同様各国を忙しく飛び回っている。
「は〜....さすがウィンクルム家、それぞれ形は違うけれど架け橋になっているんだね〜」
プロンプトは感嘆した。