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01

本日7月24日は終業式である。
そう、明日からは夏休みなのだ。
3年生の夏休みといえば受験も控えてる為勉強づくし!!!というのが割と一般的だが私は、AO入試でもう早々と受験を終わらせてしまったので特にそんな危機感はなかった。
それに関してはお妙ちゃんと神楽ちゃんも同じだった。なんと、私達は学部は違うが同じ大学に進学する事が決まっていた。なので私達は夏休み≠ニいう休暇期間にものすごく浮かれていたのであった。
「姉御!夏美!夏休みはいっぱい遊ぶネ!」
「ふふ、そうね。でも神楽ちゃん宿題もちゃんとしないと駄目よ?」
この2人神楽ちゃんとお妙ちゃんは私のお友達である。何故かこの学校はクラス替えがないので、2人は1年生の時からこんな私と仲良くしてくれる友達だった。と言うよりこのクラスの人はみんな優しい。
「わかってるネ!でもとりあえず明日のお祭りネ!!!」
神楽ちゃんの言う通り明日はこの付近で大きなお祭りが開催されるのだ。私は、昨年と一昨年は用事があり行けなかったし、中学時代も友達という友達はいなかったので今年はじめてその祭りに行くのだ。なので明日の事を考えると少し頬が緩んでしまう。
「夏美ちゃん何か嬉しそうね?」
ニヤニヤしていた私がおかしいのかお妙ちゃんは微笑みながら私に話しかけた。
『うっうん。今まであんまり友達とかいなかったからこうゆう友達とお祭りとかはじめてだから嬉しくって...っ。』
と少し気恥しく目をそらして伝えると何やら2人とも静かになったので、どうしたのだろうかと2人の方に目線をやると、
「〜〜っ!!夏美〜〜!!!!これからは私が一緒に行くからな!!!心配するなヨロシ!!!!!」
と神楽ちゃんに思いっきり抱きつかれた。
「夏美ちゃんにそんな風に言ってもらえると嬉しいわね。」
とお妙ちゃんちゃんは私達は2人を見て微笑む。その後なんやかんやで夏休みにしたい事や今後の予定など色々話し合いをしているうちに銀八先生が来て毎度の事のように面倒くさそうにホームルームをはじめる。
私の中で銀八先生は今まで出会った教師の中で1番好きな先生である。クラス替えがないので1年生の時の担任も銀八先生だった。1年生の時引っ込み思案で人見知りな私は入学式以降の授業に出れずに保健室登校をしていた。正直保健室登校は中学時代にもしていたし、慣れっこだったのだが、中学生の時の担任は保健室登校する私を「とにかく教室に行ってみろ」とか「1回教室に入っちゃえば大丈夫!」だとか根拠もない説得をされていたが銀八先生は違った。「無理する事ないんじゃね?お前のタイミングで来ればいいよ。」と優しく言われたのだ。私は、そんな銀八先生を見て教室に通ってみようかと思ったのだ。まぁ、これは銀八先生には内緒だが。そんな事を思い出している間にホームルームは終わりを迎えていた。
「じゃあな、お前ら夏休みの間に問題とか間違えても起こすなよ。あと、宿題やれよ〜」
と銀八が心のこもっていない台詞を吐きながら教室を出た。
それを合図に皆もそれぞれ動き出す。すぐに帰るものもいれば友達と固まって夏休みの事について話すものもいた。私も急いで帰る準備をしていると
「夏美〜じゃあな!明日浴衣着てこいヨ!!!」
と教室の扉付近から神楽に声をかけられたので笑顔で頷いて手を振った。それに続くように
「夏美ちゃんまたLINEするわね!」
とお妙ちゃんも手を振り新八くんと教室を出たので私は、お妙ちゃんにも手を振り返した。するとお妙ちゃんの隣にいた新八くんにも笑顔で会釈されたので私も笑顔で会釈を返した。
その後私は、帰る準備を終え1人で教室を出て靴箱に向かう。考えるのは夏休みの事だ。私の両親は海外で仕事をしているため今は一軒家を1人で使っている。だから学校のない夏休みは家で1人でいる時間も増えるし寂しな、と考えてみたり。神楽ちゃんとお妙ちゃんを呼んでお泊まり会するのもいいな〜とか、海とかプールも行きたいな〜とか。色々考えていた。
靴箱につき自分の靴箱からローファーを取り出しはいていた上靴は袋に入れカバンにつめる。そのまま履き替え校門に向かい歩く。そろそろ校門を抜けるなーという所でガシッと後から誰かに手を掴まれた。思わずガバッと振り向くとそこにはクラスメイトの沖田くんがいた。何故沖田くんが??何か用事だろうか?と思いながら何も言わない沖田くんを見た。沖田くんも神楽ちゃん達と同じように1年生の時からのクラスメイトだった。1年生の時から何故か困った事があると沖田くんに助けられる事が多かった。例えば日直になった時相手の子が帰ってしまい1人で掃除をしていたら何故か沖田くんが教室にやってきて掃除を手伝ってくれたり。私が先生に頼まれてクラスのノートを集めて職員室に運ぼうとすると何故か半分以上持ってくれたりガラの悪い先輩に絡まれた時、体調がすぐれない時はすぐに声をかけてくれたり、何故か沖田くんには助けられてばかりであった。なので神楽ちゃんやお妙ちゃんに『沖田くんって優しいよね』と言うと決まって「「それはないわ(ヨ)」」と言われるのでこれで優しくなかったら神楽ちゃん達にとっての優しいって何なんだろうと疑問を抱くことを多々あった。そんな事を考えていると
「...海野気をつけて帰れよ。」
と呟かれた。私が『え?』という前に沖田くんは私に背を向けて学校の方に戻っていった。彼は剣道部のエースだと回りが言っていたのを思い出し今日も部活あるのであろう。なので戻っていったのであろう。なのにわざわざあれだけ言いに私を追いかけてきたんだろうか?とか色々考えてみたがとりあえず
『部活頑張ってねー!』
と沖田くんの背中に向かって少し声を張り上げて叫んだ。まだ下校中の生徒も沢山いる中で叫んでしまったことを思い出し後悔した。周りの目線のせいで多分今顔が少し赤いと思う。沖田くんはビクンと肩を少し揺らし驚いた顔をして振り向いた。その瞬間バチンと目が合ったが少し逸らされた。あれ、やっぱり叫んだのはまずかったかな?と考えていると、沖田くんは笑顔になって私に手をひらひら振ったので私も嬉しくて手を振り返した。


手を振るのはまた次に君と会うため。

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