法正と悪い子
※モブに対する暴力表現有

「あなたも大概、悪いお人だ」
そう言っている法正もにたにたと人の悪い笑みを浮かべている。乙女はやっぱり法正に着いてきてもらったのは間違いだったのかもしれないと思った。けれどもこの国で自分の行為を見逃してくれるのは彼しかいないというのもまた事実であるから、仕方がない。乙女は法正を見据えて言う。
「だって、裏切り者には自分の手でどうにかしてやらないと気が済まないもの。法正殿もそうでしょう?」
「まあ、そうですが。それよりもこの男、どうやら気を失ってしまったようですね」
二人の足元には血まみれになった男がうつ伏せになって転がっている。微かに、酸素を取り込むために体が動いているから、まだ死んではいないはずだ。死んでしまったら、この思いをぶつける場所がないじゃない。乙女は不愉快だった。
「つまんない。法正殿、水持ってきて。うんと冷たいのね」
「まったく、人使いが荒い。これに見合う報恩を期待していますよ」
彼女の、仁義からは到底外れたこの行為。目撃されない為の見張りでもある法正が部屋を出ていくと、彼女は周りを見渡してから倒れている男の手の甲を思い切り踏みつけた。みしりと骨が軋む音がする。痛みに呻いた男は何かを言おうとしたが、乙女がそのまま体を蹴り飛ばしたので再び動かなくなった。
「法正殿にお返し。何してあげようかなー」
乙女は口笛を吹きながら法正の帰りを待った。今度は自分が彼の「手伝い」をしてあげるのがいいかなと思った。

(20240702)
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