将軍のためなら死ねる
雨が降り続けている。きっと、私達はもうおしまいなのだろう。水に浸かってしまった樊城から、私達を呼ぶ声が聞こえた気がした。
「于禁殿」
この人は誰にでも厳しい。他人にも、自分にも。しかし今、常に妥協を許さないその目は虚空を見つめている。最期まで戦って潔く散れ、などとでも言うのだろうか。今更後戻りなど出来ないし、する気もない。
「我らは降伏する」
耳を疑った。于禁殿を見れば、察してくれと言わんばかりに苦しそうな表情。
「お前たちを徒らに死なせることは出来ぬ」
降伏すれば私達は捕虜として惨めに過ごす事になる。于禁殿はそれを知った上で決断を下しているのだ。そうせねばならぬ目的があるのだろう。
それでも私は複雑だった。于禁殿の下で死ぬ事が私の夢だったのだから。