軍師のためなら死ねる
法正殿が倒れたと聞き、見舞いの品を持って部屋を訪れた。彼は思いのほか元気なようで安堵する。といってもまだ、念の為に執務をこなす事は禁じられているのだが。
「俺に恩を売るつもりですか」
私が隣で果物の皮を剥いていると、法正殿は冗談めかしてそう言った。彼は私に軍略を授けてくれる。いうならば、師匠のような存在だ。
「いつも教えを説いてもらっている時点で、もう十分ですよ。私の方こそ恩返ししなければいけないのに」
それもそうだ、と彼は笑う。つくづく意地の悪い人だ。
「だから、私が恩返しする為にも、無理はしないでくださいね」
私は法正殿の為だったら、多分平気で死を選べるのだと思う。私の死で策が完成するのなら、それでいい。それ程までに彼を信頼しているから。けれども法正殿が居なくなれば、元も子もない。
「善処しますよ。貴女に全てを教えるまで、俺は死ねませんから」