軍師のためなら死ねる
胸から腹にかけて、敵の斬撃を食らったのは昨日の事だった。本当は養生していなければいけない立場なのは分かっている。だが、私はどうしても戦場に立たなければいけないのだ。

「陳宮殿」

 振り返った軍師殿は、まだ傷が癒えずぼろぼろの私に駆け寄って来た。私に休むよう念を押したのもこの人だ。

「まだ、まだ出陣してはいけませぬ! 塞がりかけた傷が再び破れてはもっと大変なことになりますぞ」

 野望の為に呂布殿と組む狡猾なこの人は、案外優しいということを私は知っている。だからこそ私は立つ。この絶望に面した、下[D:37043]の地へ。

「私は床ではなく、戦場で死にたいのです」

 軍師殿はやはり何か言いたそうに顔を歪めた。私ごときが戦況を覆せるとは到底思えない。それでも。

「策を」

 観念したように、この策略家は私に出陣許可を出した。さあ、曹操軍に、陳宮殿に忠誠を尽くした者の爪痕を残してやる。
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