サイト開設半年記念 2分の1
「む、なんだこれは……ああ!」

乙女の引越しを手伝うために馬超は彼女の自宅にいた。荷物をまとめているうちに、何だかんだで懐かしい品に目を奪われる。それは乙女も馬超も同様で、2人がかりだというのに全く準備は進まない。

乙女は持っていくか行かまいかで悩んでいる食器たちの前でうんうん唸っている。それは彼女に任すとして、馬超は明らかに使わないだろうと思われるのにも関わらず残されている学生時代のノートやら教科書やらを覗いている。ふいにそれらの隙間から落ちてきたのは、長細い紙切れだった。

「孟起、何見てるの……ってこれ! こんな所に挟まってたんだ!」

乙女は馬超から紙切れを取り上げる。彼女は「懐かしいなあ」と言いながらその紙切れをしげしげと眺めた。

「お前、こんな所に放っておいていたのか。俺は今でも財布に入れているぞ」

「ええっ、財布に? 知らなかった。凄いね、もう随分と昔の話だよ。中学の頃の話なんだから」

「おみくじだから、簡単に捨てるわけにはいかないだろう。お前こそこんなよく分からないところに放置するなど、危険ではないのか」

「孟起は大袈裟だなあ。破った時点で罰当たりだよ、多分ね」

紙切れは、半分になったおみくじだった。乙女は笑いながらおみくじを見る。半分に、雑に破られたそれは何が書いているのか所々掠れてしまっていた。

「中学の修学旅行だから……十年近く前のことか? だが俺は今でもはっきりと覚えているぞ。二人分を買う時間がないから、おみくじを割り勘し、その上に結ばずに二等分して持って帰るなど、俺たちぐらいしかしないだろうからな」

馬超は財布からもう半分の切れ端を取り出して乙女に見せる。保存状態が良いのか、乙女のものよりもまだ字がはっきりと刻字されているようだ。

今でも乙女は思う。自分たちはとんでもない事をしていたと。

おみくじを割り勘することも、それを破ることも、あの場で結ばずに持って帰ることも、全てが全くもって意味が分からないことだろう。

意味が分からないことを馬超と共にするのは、その頃から楽しかったわけではあるのだが。

「よくあんなことやったよねー。馬超が言い出さなきゃ私絶対そんなことしなかったよ」

「俺が言い出したのか? お前だったと記憶しているのだが……」

「孟起だったよ、多分。悪い結果だとしても二人で分け合えば平気だって叫んでたよ」

「確かに、言われてみればそう言ったような気もするな」

適当なんだから。乙女はおみくじに書かれた「凶」の字を見た。

悪いことがないなんてことはない。人生はそんなものだろう。だがいつも傍らには、いつも馬超がいた。

「で、実際のところはどうだ? 二人で、分かち合えていたか?」

「悪いこともあったと思うけど、孟起がいるから。全然、辛いことなんてなかった」

「俺もだ、乙女! さあ、思い出に浸るのもいいが、引越しの準備を再開しよう! これからは分かち合うのではない。共に乗り越えていくのだからな」

ただの幼なじみだと、思っていたけれど。

幼なじみが恋人になってから久しい。学生だった二人は社会人となり、次第に生活に余裕が生まれた。その為に同棲を始めようということになったのだった。

「私って、幸せ者だなあ」

おみくじなどに頼らなくても、幸せになれる。馬超の嬉しそうな顔を見て、乙女も頬を綻ばせた。

(20240609)
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