私にはもう遅い
謀反なんて、馬鹿みたいだと思っていた。実際私は馬鹿で、対した義もない軍勢の中で仕えていた人達に反旗を翻した。そんな私を捕まえに来たのは諸葛誕殿だった。私は彼に殺される。別に悔いはなかった。彼には随分と面倒なことをさせてしまったと思う。ただそれだけだったし、早く終わらせてくれとばかり思っていた。
「……諸葛誕殿?」
目を開くとそこには今にも私の首を落とそうとする諸葛誕殿の姿があった。けれど様子がおかしい。
「……っ」
ああ、泣いているんだな。あんなに普段厳しくて私のことをよく怒っていた諸葛誕殿も、泣いちゃうんだ。そう思うと、こんな極限状態であるにも関わらず、私は笑ってしまった。
「すまない……くっ……」
いつもみたいに私を叱ってよ、と言おうとしたけど、諸葛誕殿は私に謝りつづけるだけだった。反対に私はおかしくなったように笑っている。ごめんなさい、諸葛誕殿。涙のせいであなたの姿を焼き付けることすらできないや。
(20240725)