おいしいご飯が食べられますように
「馬超ってさ」
器用に箸を使って魚を食べる彼。こうして私の家に、自分の家に帰らないまま上がり込んでそのままご飯を食べて寝泊りする日も増えていった。私が作ったものを美味しそうに食べてくれるのは嬉しい、けれど。
「どうした」
口に入っているものを丁寧に咀嚼し飲み込む。それを終えてから相槌を打つ仕草も優美なものだと思った。
「食べ方が綺麗っていうか……品の良さがあるよねって。そう思ったの」
「なんだ、そんなことか」
馬超という男は、騒がしく暑苦しい……と感じることも多かったのだが、こうして付き合いを深めているとたびたび感じてしまうことがある。それは、私よりも断然に育ちが良いということだ。実家の太さが段違いだし、彼自身かなりの教養を持ち合わせている。普段の振る舞いのせいでそれは隠れがちだが、それでも滲み出ているものがあると思う。友達のままだったら、きっと気がつくことはなかったのだろうけど。
「……私で、大丈夫かな」
箸の持ち方すら怪しかったし、実家は裕福じゃないし、習い事も塾に行くことくらいしかしていなかった。はっきり言って私と彼は釣り合わないのだ。もうすぐ、初めて彼の両親に会いに行くというのが、本当に憂鬱で仕方がない。
「何を言うのだ。あのな、俺が決めた相手なのだ……たとえ誰に反対されようとも俺はお前を愛し続けるぞ。いざとなれば駆け落ちだってしてやる。俺は本気だ」
「馬超……そうだよね。私も、同じ気持ちだよ」
彼はいつでも素直で、私を信じてくれている。私も彼の思いに答えなければいけないなんてことぐらい、分かっているんだけど。それでも少しだけ不安なのは、隠し通せる気がしない。ただ二人で美味しいご飯を食べてさえいられば、私はもう他にはなにもいらないくらい幸せなんだけど。
(20240731)