白い小鳩
※馬岱が黒い


「こんなことをして、許されると思っているの」

小柄な体には似合わない大きな玉座。それに腰掛ける乙女の逃げ場をなくすようにして、馬岱は彼女に迫っていた。乙女は荒々しく息を吐きながら、涙目になって馬岱を睨む。蹂躙するような口付けを交わされ、唇の端からは涎が垂れていた。手足は縄で拘束され、もがこうとも身動きが取れない。君主としてこれ以上ない屈辱だった。

「だって、それでも俺、あなたのことが大好きだから」

そう言って馬岱は光のない目で 乙女を見下ろしながら服に手を掛けようとする。必死で抵抗しようにも、簡単に抑えつけられる。何の意味もないことは明らかで、乙女は大粒の涙をぽろぽろと流す。

いつもの陽気さは、優しさはどこにいったのだ。ずっと私を陥れることを考えていたのか。 乙女はそう思ったが、息を整えるのに必死でまともに叫ぶこともできない。もっとも人を呼んだところで、こんなところを人に見られなどしたらどうなるか、たまったものじゃない。

「俺ずっとあなたのことが大好きでした。それこそ在野の士として、あなたと対等に話すことができていた遠い日から」

「だからといって、なんで、こんなこと……!」

「だって、すべてを手に入れたあなたからすべてを奪って、俺のものにするんですよ。まあ、俺はあなたさえ手に入れることができたならば何にもいりませんけど。でも、それって素敵なことでしょう? 皆から羨望のまなざしを向けられているあなたを、俺だけが自由にできる」

そういう馬岱はいつものように仮面を被って笑っていた。これを見越して私を……最初から傀儡に過ぎなかったというのか。いや、彼は国を作る気なんてないし、傀儡ですらないのだろう。初めて会ったあの日の綺麗な思い出が、音を立てて壊れていった。

(20240801)
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