ナイフが突き刺さってる
「怪我の具合はどうだ」
「……痛いです」
わざわざ私のことを見舞いに来てくださった司馬師殿は、優しい。彼のことだからこうやって数多くいる部下をわざわざ見舞うのも、自分の寛大さ、懐深さを広めるための芝居なのかもしれない。……私はそんな悲しいことは信じたくないし、だからこそこうやって……彼の身代わりになってまで大怪我を負ってしまったのだが。それももう随分と前の話で、怪我そのものはもう治ってきている。だからこそ、痛いのだ。
「……その割には、随分と元気そうに見えるが」
「怪我じゃなくて、心が痛いんです」
毎日のように私のことを案じてくれるのに、私があなたを助けた礼は一度だって聞いたことはない。お礼が欲しいとかそういうものじゃなくて、私はあなたのことが好きだから命を捨てる覚悟であなたの盾になったんだ。こんなにも近くにいるのにそれが伝わらない、受け入れてもらえないということが、私の痛みを形作っているんだ。それは体の具合が悪いとかそういうものじゃない、もっと深くて心臓に突き刺さったままだ、傷口に手を突っ込んでぐちゃぐちゃに掻き回したみたいだ。
「……今はお前の想いに応えるわけにはいかぬ」
そうやって私の心から逃げようとするんだ、あなたは。私の全てを見透かしていても、そう言っちゃうんだ。本当にひどい人。
(20240804)