春一番
※ヤンデレ気味徐庶


「結婚しよう。……こんな俺だけど……ずっと、君のことが好きだったんだ」

信じられない。乙女は拳に力を込めて、わなわなとそれを震わせた。なんで、今になって。この男はどうかしている。自信なさげに言ってはいるが、その実鋭い眼光はしっかりと彼女を見据えている。逃がさないと、物語っている。

「今の私の姿を見て、開口一番に言うのがそれなの? あなた、ずっと言ってたじゃない。私の花嫁姿を見るのが楽しみだって。だから、一番初めに会いに来てくれたんだって、そう思ったのに」

乙女は声を荒らげた。その声は今にでも胸が張り裂けるかのような悲痛な響きを持っている。これから婚礼式が始まるというのに。男は自分の何が悪いのかを知らないとでもいうように、乙女の手首を容赦なく掴む。

「やめて、私に触れないで! 元直なんて大っ嫌い!」

「俺と結婚しよう……必ず幸せにしてみせる、いや、幸せになるしか有り得ないよ」

手首を強く捻られたまま、壁に体を押し付けられる。頭ががん、と音を立ててぶつかるのもお構い無しで、男は自分のことしか考えていないようだった。

「いや、どうして、こんな……」

「俺には勿体ないくらいだ、愛しているよ」

開け放たれた窓から吹く暖かい風が、こんなにも冷たく感じるなんて、知りたくもなかった。

(20240804)
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