両手に花?
「甄姫姉さまと一緒に過ごせる時間は何よりも美しいです」
「私もですわ、乙女……」
茶を優雅に飲み笑う乙女。彼女は甄姫に陶酔していて、もはやそれは愛と言っても差支えがないほどだった。そんな彼女のことを甄姫もうっとしとした眼差しで見つめている。恋人が語らっているかのような情緒が場を支配している。
が、この空間に水を差す男が一人。
「……乙女。なぜお前がここに……」
曹丕が二人の女を見遣る。
「あら、我が君。今私は乙女と二人きりで楽しんでいるのですけれど。いくら我が君とはいえ、乙女を追い出すことは許しませんわ」
「そうですよ兄上。今日は姉さまにお誘い頂いたんですから。邪魔しないでくださいね」
別に曹丕とて、仲睦まじい二人を引き裂きたいわけではない。
ただ、場所が問題なのだ。なぜ自分の私室を二人が……甄姫はともかく、乙女まで占領しているとは。
何か言ってやろうとは思ったが、この花園を踏み荒らすのは情緒の欠片もないというもので。
「……私もその輪に入ると言ったら?」
「まあ、嫌ではありませんけど。ねえ?」
「そうですわね。でも、我が君の分の菓子はもうなくなっていますわよ」
「……」
女の園に男が一人。普通の男なら羨ましく感じるだろうが、曹丕はただただ居心地の悪さを実感するのみだった。
(20240805)