賈充と秋の実り
賈充は何やら複雑な気分であった。貰い物の白梨を乙女と共に食べようとしていたのだが、当の本人に断られてしまったのだ。普段主であり親友でもある司馬昭のことにかまけて、辛い思いをさせているだろう妻へのささやかな詫びのつもりだった。

まさか開口するや否や、
「私のことは構いません。どうか司馬昭様に献上なさってください」

と言われてしまうとは賈充も予想していなかった。普段構ってやれないことから拗ねているのかと思いきや、どうも本気でそう思っているらしい。強情なのも如何なものかと賈充は思うが、自分も人の事はどうとも言えないので言い返せないのである。

 そういう訳で、賈充は乙女に部屋を追い出され、こうして未だに部屋の前で呆然としているのであった。

「お、賈充! 丁度いい所に! これ、貰い物なんだが、乙女と一緒に食べてくれ」

 一番会いたくない奴が来てしまった、と賈充は思う。よりによって、どうしてこいつが来るのだ、と。

「ほら、葡萄。美味そうだろ?……って梨もあるのか? まあ、二人でゆっくり食べてくれ」

「おい、子上……!」

 早口で捲し立て、足早に去っていく司馬昭に何か言ってやりたいものだったが、彼は手をひらひらと振って、去っていくのみであった。結局賈充の右手には白梨の入った籠、左手には葡萄の入った籠が残されるのみ。

 乙女にきっとこの会話も聞かれているのだろうと、扉の向こうに居座る凛とした姿を思い浮かべる。

 どう言い訳したものかと思いながらも、結局賈充は扉を開け、手ぶらになったどころかさらに貰い物が増えてしまった姿を乙女に晒すこととなった。言い訳などない、ただ二人で過ごしたいだけなのだと、賈充は今更ながらに思いを馳せた。


(20201101)
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