あ。
ふらりと華奢な体が傾いて、それから彼女の白いシルクの手袋に覆われた滑らかな指先が、咄嗟に支えた男の胸に滑る。
「っ、申し訳ありません」
「い、いや、キミこそ大丈夫かね…っ、」
その色香を感じさせる仕草に頬を紅潮させた男は、懸命に絞り出した言葉を口早に必要に彼女の体に触れる。
「大丈夫ですわ…まあ、なんて素敵な方でしょう」
良い香りのする殿方ですこと。
さらりと胸に傾かれた艶やかなセミロングの髪、グロスに濡れた唇から、緩やかに見上げた怪しげな色を秘めた視線に次々と目を奪われ、白髪混じりの男は生唾を飲み、いやらしげな表情にみるみる変わっていく。
その様子に、意味ありげに彼女はにっこり微笑んだ。
「是非、お近づきになりたいわ」
*
問。一番仲のいい友人を、偶々とある招待制高級パーティでばったり見かけてしまった時、自分の取るべき行動は次のうちどれ。
1、見つかる前に立ち去る。
2、先日ぶり。新しい職場も有名な会社?などと世間話を吹っかける。
3、気にせず悠々と他人のフリをしておく。
正解は4。そもそもその友達がお偉いっぽいおっさんに熱烈アピールかましてお持ち帰られルート不可避なので、その趣味はヤベェぞと止めに入る、でした。
勿論ここが危険な薬物取引も行われるかもしれない危険な場所だという事もある。もし万が一にもあの中年が今回のターゲットで、薬を打たれでもしたらと考えるとゾッとしない。
まあ、持ち場を離れた罰としてクビになっても、最悪お手伝いだし良いか。それより彼女だ。
多分疲れて視力失ってるし、早々に送って帰ろう。
彼女の趣味といえば、初恋とかいう男の子が理想だそうで、少し俺様で、素直じゃない優しさがあって、わかりやすくて、そもそも顔が端正で身長も高めなのは基本で…、間違っても枯れ専やデブ専では無かったはずだ。いくら記憶力が悪くとも、胸を張って言えるぞ。見れば見るほど、彼女が確実に落としにかかっている女の顔を向けた相手を信じられない。
「…やあ、壁に可愛らしい華が飾られているかと思えば…どこのお嬢さんかな?宜しければ俺とこの後…」
「花…?すいません、急いでるので、」
もしや、幻覚が見える成分の薬を混ぜた酒でも配られているのだろうか。だとしたら、何も口にしなくて正解だった。
後で採取するとして、宿部屋の方へと消えそうになっている友人の方へと足を急がせた。