
あすにはわすれるおはなしのひとつ(2)
「アドバイしゅをもらったらいいんじゃない?」
『…けど、話しかけても大丈夫なのか?』
「分かんない!」
ガクッと肩透かしを食うジャズ。
「厳しいって、どんな感じ?俺の側に近寄るなオーラとか出てる?」
『オーラ?』
「えっと…雰囲気とか、気配とか?目に見えないから例えるなら…電磁波みたいな感じ?」
『ふーん…』
『アイツは教官で、戦いや武器の扱いにも長けている。まぁ質問には答えるだろうな』
「ぷりゃい…噛んだ」
『ハハッ…で?プライベートは?』
ラチェットがぼそりと呟くと、二人は交互にしゃべりラチェットに詰め寄った。
(なぜコイツ等はこんなにもう仲が良いんだ)
"あの"後、
『…では、どこで監視しますか?』
『うむ…』
『電磁牢は大きさが合わんぞ』
『私の研究室は』
『『『駄目だ』』』
「…」
手持ち無沙汰にしていた幸縁に声を掛けたのもジャズだった。
『シエン』
「うん?」
『お前は?ドコがいいんだ?』
『貴様。たかが士官候補生が何を言っている』
『……トモダチ、だからかなぁ〜』
「!」
『何を莫迦なことを』
「じゃじゅ…」
『ん?なんだ?』
彼女は笑った。
「私、みんなと会えるんだったら…どこでもいいよ」
『え』
『貴様は選択権を放棄するのか』
「こっちが無理言ってるんだからさ。…どうせ何処も私より大きいだろうし」
シ◯バニアファミリーのお人形と人間の家屋よりも大きい空間を想像してみてほしい。
電磁柵はただのイライラ棒と化しているし、セキュリティーガバガバなのだ。
『なら、本当に。どこでもいいんだな』
「うん」
『なら私の研きゅ』
『『『駄目だ』』』
『…』(ショボーン)
「他のセイバートロニアンには見つからないように、こっそりおじちゃんのとこにも遊びに行くよ」
『おぉ…ありがとう』
「いえいえ」
『まったく…私達が聴いているんだぞ』
『おぉ、すまん』
「あははっ。でも分かってる機体が傍にいたほうがいいかもね」
彼女はホイルジャックに撫でられるがまま。ぐらぐらと揺れる頭部パーツが損傷しないか心配だ。
(…心配?今私は彼女を心配していたのか?)
『ラチェット?』
『!…なんだオプティマス』
『暫くの間、君の部屋に彼女を住まわせる』
『!?』
『あぁ。そうしたほうがこいつを監視しやすい。専用の部屋を作るにも材料がいるからな。案外時間がかかる』
メガトロンの言葉にうんうんと頷く彼女。
(だから何で納得しているんだ君は。当事者だろう)
『彼女の部屋が出来るまで、よろしく頼むぞラチェット』
「よろしく!」
『馴れ馴れしいぞ』
「ごめんよ…あ〜先生?」
『私は軍医だ。先生じゃない』
「じゃあ…ラチェット軍医!」
『却下』
『ラチェット』
「ラチェ!」
『なんだっ!』
「よし!ラチェで決定!」
『なっ…!?』
無駄な問答をしている間にオプティマスに話し掛けられ思わず返事をすると、彼女が私の呼称を決めてしまった。
訂正する前に。
『つーか部屋まで作んのかよ!』
『そうだ…うろちょろされてうっかり踏み潰したらかなわんからな。ラチェット、お前の部屋に連れていけ』
ひょいと自分の掌の上にシエンが乗せられたために、訂正する機会を逸した。
その間にも着々とシエンの居住場所の検討が進んで行く。
(おい盛り上がるな)
その光景にキリキリとヘッドパーツが痛む。
心配するように見上げる原因の彼女を無視し、自分のラボに向かった。
こうして、話の流れで一時的に、私がコウダシエンを預かることになったのだった。