
危うい育児(5)
ブラックアウトは困っていた。
小さな有機生命体の処遇に。
『ブラックアウト』
『はい閣下』
『俺とオプティマスは、ある生命体を保護している。上院議院共とのくだらない会議があるのでな。4メガサイクル(地球時間で4時間)、そいつの面倒を見ろ。』
『承知いたしました』
『……極秘事項だ。丁重に扱え。もしそいつを損傷させたら、貴様のスパークで責任を取ってもらうぞ』
(メガトロン様の命により他者の目に着かないよう自室に連れてきたはいいが…どう扱えばいい?)
「おにいちゃん?」
『…なんだ』
「メガトロンしゃんは、どこ行ったの?」
『閣下は仕事だ』
「お仕事?」
『そうだ。予定に変更が無ければ、4メガサイクル後にお戻りになる』
「さっき…お仕事がんばってって、言えばよかった…」
しょんぼりとするシエンをブラックアウトは疑問に思った。
『それを伝えてお前はどうするんだ』
「え?」
『その行動が、お前に何をもたらすのかと聞いている』
「え〜っと、さぁ?」
『さぁ?とは…』
「挨拶は基本だし。お世話になってるメガトロンしゃんに、ただ感謝を込めて言いたかっただけから」
『チイセェクセニ、レイギタダシイヤツダナ!』
「?…小さくても、できることってあるよ?」
『ナカナカイイコトイウジャネェカ』
「適材適所でしゅ」
『キュー!』
「ね〜」
『…そうか』
小さい物同士意気投合し始めた二体と一人を見て、彼は機体に入っていた無駄な力を抜いた。
(ファーストコンタクトは良好。敵対行為無し。閣下への反乱意識0%…これなら問題無い)
メガトロンの判断を疑う訳ではないが、反乱分子や彼に仇なすものを、ブラックアウトは許さない。
それは彼を以前の役職から上へと登用したメガトロンへの忠義の証。
警戒されていることも知らずに幸縁は小さい者同士じゃれていた。
スコルポノックの頭の上で腹ばいになり、フレンジーと手と手を合わせている。
「フレンジーの手、キラキラしてる〜きれ〜い」
『オマエノハダンリョクガアルナ。モロソウダ』
「やわらかいでしょ〜」
『ヤワラカイ…』
「ぷよぷよ〜」
『プヨプヨ〜』
『キュー?』
「スコちゃんは、動くと音が鳴るから…かちゃかちゃ!」
『キュ〜』
「あはは!」
(動物のような思考しか持たないスコルポノックが、有機生命体を振り落とさないよう気にかけて動いている。指令伝達範囲の拡大。ミッションの幅が増えるな…)
『お前は』
「幸縁でしゅ」
『…シエン、先程閣下といた時は、何をして過ごしていた』
「んーとね、お勉強!サイバトロン星の歴史や、どんな生活をしてるのか教えてもらいました!」
(芸術に力を入れていると聞いた時は、意外でびっくりした。どんなん作ってるのかな?…あ)
「ねぇねぇ!みんなは、げいじゅつ作ったことある?わたし見たい!」
『芸術か…』
「みんなみたいにキラキラしてる?かっこいい?」
『──作品や、個体の嗜好によって作風や印象は異なるものだ』
『モッタイブッテナイデ、ミセテヤリャイイダロウ』
『キュー!』
「おにいちゃんが作ったの?見たい!」
見せて見せてとスコルポノックの背中の上で転がる幸縁。
落ちて損傷されては困るとブラックアウトは彼女を一度持ち上げ、座り直させた。
「大人しく待機していろ」
「はーい!」
数分後。
ブラックアウトが部屋に戻ってきた。
彼の手には先程持っていなかった小箱(それでも幸縁より大きい)が。
期待に胸を膨らませ幸縁はそれの中身を見た。
「これが、俺が作ったものだ」
「こ、こりぇは…!」
重厚な装甲は堅牢さと威厳を感じさせ、緻密な内部配線は生命を育む大樹の根を思わせる。
此方を見る双眼に光はないが、今にも動き出しそうなメガトロンがそこにいた。
「デタヨ。ブラックアウトノカッカコレクションガ」
「会心の出来だ」
「す…すごい」
「目も光る」
「カッコイイーーッ!!」
(まんまプ●ミアムバストォォォオ!!)
あまりの素晴らしさに涙が出てきた。
「オガムナオガムナ」
「メガトロンしゃんがかっこよすぎるのが悪い」
「閣下の素晴らしさが分かるとは、有機生命体としては中々なものだ」
「ありがたや〜」
「…」
「オマエモカヨ!?」
彫像に拝む一人と一体。
それからメガトロン本人が戻ってくるまで、金属の精製・加工・モデルの機体の造形美を語り合った。
※そして冒頭に至る。