シュガー・ホーム(2)



その声に急いで目を開けると、私の顔を上から覗き込んでいる男の顔が。

「うわっ!ちょ、わっ」
「落ち着け」

月明かりに照らされた男は宥めるように、幸縁の前髪を指先で弄ぶ。

「メガトロンさん」
「あぁ」
「いつからここに?」
「3時間ほど前だ。鍵が開いていたぞ、不用心なやつめ」
「す、すみません」

メガトロンは眉をひそめながら注意したが、幸縁を撫でる手はひどく優しい。
心地よさにふにゃふにゃ頬が緩む。
でも。

(ひ…膝枕…!)

後頭部の少し固いが弾力のある感触と見下ろされていることで自分が今どんな状態か気づいた幸縁は、緊張で徐々に体が強張ってしまった。


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(メガトロン視点)


「まったくこの愚か者共が!」

何度怒鳴りつけても作業は一向に進まん。
我々ディセプティコンは講和を結んでから直ちに惑星サイバトロンの復興に取りかかった。
少しずつ以前の姿に近づきつつあるが、まだまだ時間はかかるだろう。
美しい故郷をメモリーから引き出し眺めるたび、早く復興をと思いながら作業に勤しんでいたが、今日は少し様子が違った。

「メガトロン様!」
「ここは…」

入り口を塞いでいた瓦礫を撤去すると、そこは幼い幸縁が過ごしていた部屋だった。
そこから思い出話が始まり、いつしか数が増えた。
自分らのメモリーの品評会まで始めおって。効率なぞもはや0だ。
仕方がないが作業を中断し…サウンドウェーブに通信を入れ幸縁の様子を聞いた。


『サウンドウェーブ』
『はいメガトロン様』
『シエンの様子はどうだ』
『…』
『どうした』
『部屋が荒らされています』
『なんだと』
『シエンは衰弱しているように見えますが、どうしますか?オートボットに連絡を』
『俺が行く。オートボットには俺が行くことだけを連絡しておけ』
『要件はいかが致しますか?』
『…野暮なことは聞くな、と』

そう告げて俺様は地球に降り、幸縁のもとへ向かった。
庭を突っ切り、玄関のベルを鳴らす。
ノブを動かすと、扉が開く。

「不用心なやつめ」

家の中に入り鍵を閉め、室内を見回す。汚い。足元に落ちていたカレンダーに書かれていた文字をナノクリック。…なるほど。壁に付いた小さな手形を見ながら室内をスキャンすると生体反応が一つ。

(上か)

俺は階段を上った。
寝室のベッド。ではなく床で寝ている姿は行き倒れのようだ。

「…」
「…ムニャ」

俺様が側に膝をつくと、気配を感じたのか、あっという間に幸縁の頭が膝の上に乗った。

「おい虫けら、起きているのか」
「…ピー」
「鼻息で返事をするな」

胴体にしがみつかれ中途半端な位置で身動きが取れなくなる。移動しようと思えば出来るが。

「ふふっ…すぴー」
「……この、愚か者め」

己が纏っているコートを幸縁にかけて寝顔を見つめる。
いつの間にか自分もスリープモードになっていたらしく、目を開けると幸縁の頭部がずり落ちそうになっていたため手を伸ばし位置をずらしたが、その揺れのせいで彼女は起きた。

「起きたか」
「…!?」

(メガトロン視点終了)
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「どうした」
「ぁ、の」
「言ってみろ…ん?」
「わっ…ぁっ…!」
(顔が近い近い近い!)

ひえぇ、と顔を手繰り寄せた布にうずめると。

「あれ?メガトロンさん?これ…上着!?」
「床なんぞで寝ているからだ」
「そっか…ありがとうございます!だから途中あったかくなったのかぁ〜」

笑いながら幸縁がまたコートに顔を埋める。

「シエン」
「はい?」

顔を上げメガトロンの顔を見ると。

「メガトロンさん…」
(なんか、)
「機嫌、いいですね」

眉間の皺が、と続ける前にいきなり体を抱き上げられる。
幸縁が驚いてる間に体はベッドに運ばれていた。

「光栄に思え」

メガトロンに優しく体をベッドに横たえさせられると、上に覆い被さりながら言われた。

「シエン」
「ふぁい?!」
「トリックオアトリート」
「え?!え?」
「無いのか」

パニックになりながら首を縦に振ると、ニヤリ。

「ここに菓子があるだろう?」
「はぁ!?メ……えっ?」
「久方振りのエネルギー補給だ」
「うそぉ?!私!?」
「イタダキマス」
「あっ、ちょい…ま、わぁぁぁぁぁあ!!」



















翌朝

「腰いたひ…眠い…」
「シエン」
「あっ、ぉ…おはようメガトロンさん」
「…しえん」
「?どうしました?」
「食い物を…エネルギーが…」
「やっぱ嘘じゃん!?ちょっと待って…あ゛ぁぁ腰いってえ!!」
「…………すまん」


fin
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