寝起きでは何やられても余裕が無い(3)


「起きた直後に二人に消火器の中身かけられて…怒ってヤッテシマイマシタ」
「何じゃそうだったのか!」
「冷静に考えれば、お二人も何か事情があったと思うのですが。あの時はそこまで頭が回らなくて」
「正直に話してくれてありがとう。これで警戒状態を解除できる」
「そんな、悪いのは私で…本当にごめんなさい」
「いいんじゃよ。敵がいないことが分かって、皆安心するじゃろうから」

自分を気遣うキン肉スグル大王に、沙希は心から謝罪した。
キン肉マンはそれを受け取りつつ、話を変える。

「そういえば、晩御飯は万太郎と約束していたと聞いたが」
「はい!ビビンバさんのカルビ丼!」
「ふふっ、沙希ちゃんはそれより先にお風呂に入らなきゃね。服も新しいのを持ってこなくちゃ。身体中消火剤まみれよ」
「今日は此処でゆっくりしていきなさい」

キン肉マンは部屋に控えていたらしいキン肉族の執事と二、三言葉を交わすと立ち上がった。

「あの!ありがとうございました!」

キン肉マンはイタズラっぽく笑い、去り際に沙希の頭を撫でていく。
沙希は彼が部屋から出て行った後。顔から布団に突っ伏した。

「ど、どうしたの?」
「何あの人、いい超人すぎるよーっ!笑顔のキン肉マンさんマジ可愛い!!さすが万太郎君のお父さん笑顔がそっくりなんだけど!」
「かわいいでしょ?後でアルバム見る?」
「妻余裕の貫禄!ビビンバさん素敵!ぜひお願いします!」

目の前でキン肉マンのファンになった沙希にビビンバは微笑む。
うっかりしっかり超人の怖さを忘れた沙希は、意気揚々と準備に取り掛かるのだった。

「ひゃあ〜!疲れた〜!!」
「お帰りなさい万太郎」
「お疲れ様万太郎君」
「母上!サキさんも!」
「さぁご飯よ。今日は張り切って作ったから、たくさんあるわよぉ〜」
「「わーい!」」
「ミート君もどうぞ」
「あ、ありがとうございます」

三者三様のいただきますの言葉から、遅くなった夕食を食べる。

「ビビンバさんのカルビ丼超うっま!」
「でっしょぉ〜!」
「うん!おいしい!」
「昔教えてくれた人が上手だったのよ」
「「へぇ〜」」

(キン肉マンのママさんに教えてもらったのかな?)

仲良くて幸せそうで何より。
そう思いながら沙希はカルビ丼を味わった。

「そういえば、万太郎君は今日此処に泊まるの?」

食後、皆で爪楊枝をシーハーしながら会話する。
万太郎は残念さを全面に出しながら、沙希の予想を否定した。

「ううん…沙希さんに対するお詫びの食事会が終わったら、H・Fヘラクレス・ファクトリーに戻らなきゃいけないんだ」
「二世は訓練がありますから」
「そっかぁ…残念だなあ……」

知り合い(勝手に知ってはいるが)のいない沙希は、純粋に親しみをもって接してくれる万太郎が戻ると聞き寂しげだ。

「また会えるかな?万太郎君がいないと寂しいし──話し相手大人ばかりだと、気遣うしさ」

後半を小声で伝えると、彼は何度か瞬きをした後。嬉しそうに微笑んだ。

「訓練は座学があるみたいだし、ご飯の時間とかも会えると思うよ」
「なら、その時会いに行くね」
「うん!」
「学校の友達に会いに行くって、久々な感じがする」
「……サキさんとボクは友達だからね!困ったことがあったら言ってね!」
「うん!ありがとう!万太郎君もね。ミート君は、私と友達になってくれる?」
「──ボクはもう、サキさんは友達だと思ってますから!」

小さい身体でもしっかりアピールしてくれたミートを沙希は抱き締めた。
赤面したり慌てふためく二人を尻目に、しばらくの間沙希は喜びを噛み締めるのだった。