寝起きでは何やられても余裕が無い(2)

「沙希さぁん。夜ですよ〜…起きないわ。きっと疲れちゃったのね」
「ワシも早く、万太郎を助けてくれたというこの子とお話したいのぅ」
「えぇ…何年ぶりかしらね」
「そうさなぁ?だが、また会えて嬉しいぞい」
「私もよ。あ、そういえば彼女の記憶が無いことは聞いてる?」
「……え?」
「え?」

夜の帳を引き裂くような悲鳴で、沙希は飛び起きた。

「なに!?どうした!?」
「お、驚かせてしまってごめんなさい」
「ビビンバさん?何かあったんですか?」
「い、いえちょっとその…う、宇宙ゴキブリが!大丈夫よ!もう退治したから!」
「そ、そうですか(凄い汗かいてる。キン肉星のゴキブリはテ◯フォーマーズのやつみたいにムキムキなのかな?)」

こうして沙希は一つ間違った知識を身につけた。

「あ、腕とか拭いてくれたんですか?」
「えぇ。何故か真っ白だったから…」
「そう!聞いてください!酷いんですよ!?起きたらいきなり消火器かけられて!」

プンプンと怒る彼女の勢いに、ビビンバは相槌を打ちながら宥めた。

「そうだったの。大変な目に遭ったのね」
「あ、すみません…怒鳴っちゃって」

沙希は深呼吸し落ち着いて考えた。
冷静に考えれば、訳もなくあんなことはしないのだ。

(初対面の超人ばかりだけど、今のところ親切にしてもらっているし)

自分に火が燃え移ろうとしていて、防ぐためだったのかもしれない。
二人にした所業を思いだし焦る。
しかし、先程飛び出した部屋の位置が分からない。

「どうしよう…」

伝説超人レジェンド二人が、校内で失禁!悪行超人よりも手強い相手は尿意だった!?】

噂や新聞で取り上げられたら死にたくなるような見出しを想像してしまい、沙希は泣きそうになった。

「どうしたのかね?」
「え?」
「何か不安に思うことでもあるのかな?」
「貴方は……キン肉マンさん?」
「おぉ、こんな若いお嬢さんにも知られているとは、ワシもまだ捨てたもんじゃないのぅ」
「えっと…万太郎君のマスクとそっくりだったので」
「そうかい、そうかい…話は聞いたよ。君が万太郎を助けてくれたんだね?」
「え!?いや私は何もしてないというか、何も出来なくて…」

一人で意気込んで、怪我をしただけ。
沙希はそう言って苦笑した。

「何とか隙は作って…ミート君を抱えても彼なら足は速いので逃げることはできました。私が傷ついても無視すれば済むだけだから」
「…」
「それでも、彼は振り返った。一人で闘って勝った。彼が助けてくれたんです。私は、なにもしてません」
「あの、怖がりな万太郎が…」
「地球の守護神キン肉マンは、万太郎君が継ぐのかもしれませんね」

キン肉マン…キン肉スグル大王は。
その言葉を聞き、嬉しそうに、でも少し寂しそうに頷くのだった。

「おっと、話が逸れた。先程気にかけていたことは何かな?」
「あっ!あの、ウルフマンさんとジェロニモさんは今どこに?」
「二人なら手足を縛られた状態でもがいているところを、ジェシー・メイビア先生が見つけたよ。悪行超人の残党の仕業かもしれんと今調査中なのじゃが…何故か二人共、犯人の顔を見とらんと言ってな?そう簡単にはやられん二人なんだが」
「すみません犯人です」

大事になってました。