未染められし者(2)


某宮殿室内にて。
部屋の主の情けない叫び声が響く。


「そんなぁ〜〜っ!?」
「そんなもこんなも無いわ!」
「ならどんなよぉ!?」
「よいか。お前は、かつて父キン肉マンがそうしたように…地球に行き、悪行超人と戦うのじゃ」

勉強をサボっていた部屋の主、キン肉万太郎は、後ろから話しかけてきた祖父と、祖父の口から聞かされた言葉に反発していた。

「そのためにはまず、ヘラク」
「嫌だよぉ〜そんなの」
「な、なんじゃとぉっ!?」
「ボクはそんな野蛮なことしないよぉ。戦うために身体を鍛えるより、漫画とかゲームとか、楽しいことがたくさんあるからねぇ」

万太郎は現在14才。
地球では中学生くらいの年齢である。
この頃から将来を計画し熱心に取り組むなんて、お受験戦争へ挑む母親と子供くらいだ。
彼は普通に、今が楽しくあればいいのだろう。
その"普通"が誰かの犠牲の上で成り立っていることを、まだ理解していないのだ。

「ぬぅううっ!なんと嘆かわしい!その腐った性根を叩きなおしてくれる!」

だが、そんな孫の態度に納得行かないキン肉真弓は胸倉を掴んで引っ立てようとした。
しかし、それは叶わなかった。
勉強するふりをしていた万太郎は、教科書に挟んでいたグラビア雑誌を、祖父・真弓の眼前に突き出して気を逸らしたからである。
逃亡を図る万太郎のせいで、宮殿内は上へ下への大騒ぎ。
宮殿内で警備隊との追いかけっこの繰り広げ、しまいには崖から落ち、落下点にあった宇宙船に乗り込んでしまった。

「誰か助けてぇええええっ!?」














同日地球。一人の女性が目を覚ました。

「…んぅ?」

飲んだくれのようにベンチで寝ていた彼女は、寝ぼけ眼をこすりつつ、身体を起こし辺りを見渡した。
周囲にはブランコ、シーソーや鉄棒があり、離れたところで子供がキャッキャッと遊んでいる。平和な光景だ。

「うぅ……頭痛い」
「あなた大丈夫?」
「え?」
「若い子がこんなところで寝てたら危ないわよ」
「あぁ、はい。気をつけます」
「最近悪行超人が現れるって噂だから、気をつけて帰るのよ?」
「はい。ありがとうございます」

気を遣って声をかけてくれた主婦に礼を言うと、別れ際におすそ分けとして栄養ドリンクをくれた。
栄養ドリンクを握り締めた彼女は独りごちた。

「何処だよ此処……」

ここに来るまでの間のことが分からなくなっていたのだ。