未染められし者(3)


通りすがりの人に道を聞くと怪訝な顔をされ、近くの交番に辿り着くのに数十分かかり、すでに疲労する始末。

「君ねぇ、警察舐めんのも大概にしろよ」
「え?いや」
「まったく悪行超人にやられっぱなしだからって市民にここまで舐められているとは…」
「ほ、本当のことで」
「あぁ゛!?」
「す、すいません…」

辿り着いた警察所で正直に記憶が無いと言えば、悪戯かと勘違いされグダグダ愚痴と文句を吐かれてしまい、結局まともに取り合ってくれやしなかった。
険しい顔をしたヤクザのような警官達に見送られ、彼女もとい此方沙希は、とぼとぼと行く当ても無く街を歩いた。

「自分の持ち物確認してから行けばよかったな。何かヒントがあったかも…まぁここがどこか分かっただけでもいいか」

ここは東京の田園調布。
都会で日本の高級住宅街として有名な場所である。

「東京!?東京ナンデ?!こちとら生まれの育ちも試される大地だぞふざけんな!!なんで上京してんだよ状況が分かんねぇよ今のセリフおもしろくもねえよ!!」

ムカつく!水道水がまずい!人が優しくない!など散々に八つ当たりしながら。
※全東京都民の皆さんごめんなさい。
八つ当たりしたせいか日頃の行いのせいか。
地理に明るくない沙希は泊まるところも見つけられず、結局最初の地点である公園に戻ってきてしまった。
すっかり時刻は夕方だ。

「なんでこんな時に携帯忘れちゃうかなぁ…仕方ない。ダンボールの家をマイホームと呼ぶ人すらいるんだ。明日になったらまた探せばいい!!とりあえずご飯食べよう。お腹空いてたら余計悲しくなっちゃうし」

街を散策した際にコンビニで購入した品をベンチに並べ、少し早い晩御飯。酒を買えばよかったなどと一人でしばらく喚いていたが、だんだん静かになり、最終的には黙ってしまった。

(不安だ……)

記憶を失い、市民の味方である警察に見放されてひとりぼっち。
日は暮れて、長く伸びる自身の影を見つめる彼女の目には涙が浮かんでいた。
寂しさと不安に堪えきれずに涙が零れた瞬間。

「ぎゃああああああああ!!」
「!?」

ズドーーン!!

轟音と共に鉄の塊が公園の敷地内に落下してきた。

「え…えぇぇ!?」

地面の揺れと土煙が治まり、視界に入ってきたそれは。

「何これ?ロケット…?」

小型の宇宙船のようなものだった。逆さまに突き刺さっているそれは一人乗りだろうか、案外小さい。
突如飛来(墜落)した宇宙船に悲しい気分は吹き飛ばされ、興味深々で眺めていた沙希は、その宇宙船から崩れるように倒れてきた人物と目が合ってしまった。