その一度の忘れ難き所業(1)

初めて彼を見たのは、ウォーズマンの体内で試合が行われている時だった。
字面で見ると凄い違和感だが、本当のことだ。

「忍者にとって必要ないもの……それは愛ってやつだ!」
「なんか言ったか名前?」
「なんでもないよお父さん」
「そうか?うぉーー!?キン肉マン危ねぇ!!」

画面の向こうでブイブイ言わせてるのはザ・ニンジャ。
自分の父が声援を送るキン肉マンは、父の友達らしい。
牛丼を奢ってあげたら懐かれたと以前話していた。
──彼らは本来であれば漫画の世界の住人である。
そんな彼らがマットの上で戦っているのを直接見れるとは、二度目の人生を謳歌してみるものだ。

「……かっこいいなぁ」

二度目の人生で楽しみも無く過ごしていた私は、一目で心奪われてしまった。
そんな壮絶な戦いを超人レスリングファンの父と追いかける日々はあっという間。
いつしか練習が辛いと嘆いていた彼は、キン肉マンは、自分の星の王様になった。
数々の戦いを通して学び、全ての超人を大切にするという宣誓を神々にし、王位を継承したのだった。

それから数ヵ月後。

「お見合い?」
「その冷たい目線!正気だからねお父さんは」
「マジかよ余計たち悪いわ」

娘からの冷たい目線に父はがくりと居間に膝をついた。
仏壇にある母の遺影も心なしか嘲笑しているように見える。

「何でそういう話になったの?」
「いやぁ昨日キン肉マンと飲んでな!」
「仕事サボって何してんじゃワレェッ!」
「ギャーッ!?気分転換!気分転換!」
「……で?」

シベリアの寒波より冷たい声色で話を促され、名前の父、忠親は話を続けた。

「祝勝会だ!飲もうって!前から話はあったんだ。超人の仲間とはもうやってたから俺ら二人だけだけど。それでキン肉マンから誘われてな?忙しい中時間作ってくれたみたいだから…」
「そっか。それで?キン肉マンさん元気だった?あれ?本名スグルさんだよね?」
「あぁ。で、店に行ったら…なんと!ソルジャーがいたんだよ!」
「え!」
「大切な友人に、ちゃんと自分の家族を紹介したいって…ぐすっ」
「よかったねお父さん!」

思い出して感極まってしまった父。牛丼の縁、恐るべし。

「嬉しくて嬉しくて…ついサインもらっちゃった」

ほら、と見せた色紙には少し汚い字で¨キン肉スグル¨と立派な筆跡で¨キン肉アタル¨と書かれている。

「そっちかーい!ちゃっかりしてんな!つーか私にその話来てないんだけど!」
「だってー!お前泊まり込みで仕事してた日だったしー!」
「うぁあああ!!あの日か!悔やまれる…お父さんだけずるい…」
「悪かったよホント」
「ニヤニヤして言われても腹立つわぁ」
「ごめん。嬉しくて嬉しくて…話が逸れたな。それで俺も大切な家族の、名前の話をしたんだ。ちっちゃい頃からひよこみたいにいつも後ろをついてきたとか今もかわいいとか好きな和菓子は#name3#とか毎試合キン肉マンを応援してたこととか王位継承の試合のときも見に行っただとか」
「お、お父さん…関係ない話混ざってる」
「いや溢れんばかりの愛が」
「親馬鹿め」
「アタルさんの弟馬鹿も中々だったぞ」
「何それ萌える」
「萌え?」
「なんでもござらんッスよ!」

うっかり昭和の時代に無い言葉を使い誤魔化す名前。

「で、そんな娘なら嫁に行くとき大変だなって話になって。半端なやつに娘はやらん!!って言ったら…」



以下回想

「二人は仲がいいからのぅ〜」
「…娘さんの年は?」
「え?今年で22歳、だけど」
「そうか。私の知り合いの超人にちょうど同じような年齢の者がいる。彼ならきっと大丈夫だろう。二人をお見合いさせてみてはどうだ?」
「本当に大丈夫か?名前を傷付けたりしないか?」
「あぁ」
「それならいい。だが俺の審査は厳しいぞ!相手には悪いが会うだけになるかもしれんな!」
「「「ははははは!」」」