その一度の忘れ難き所業(2)
「いや、無理無理。私地味だし最近太ったからデブだし面白い話できないよ?あ、お父さんとのベルリン遭難事件くらいなら」「いやいやいや!!あれは笑えなかった!ドイツ語話せないしはぐれて迷子になるし!」
「会えたのはお父さんのボディランゲージがすごかったおかげだね。なんでジェスチャーでベルリンのメインストリート説明できるの道案内頼めるの」
「これぞ火事場のクソ力…おかげでしばらく筋肉痛になったよ」
一頻り笑った後名前は切り出した。
「……ねえ、やっぱり断れない?」
「嫌か?」
「う〜ん、嫌かな。まだ20代だよ?私はまだ自分の好きなことしていたい。結婚するなら恋愛してからしたいし」
「そうか…悪かった。相談してから返事すればよかったな」
「うん。分かってくれてよかった」
しかし、浮かない顔の父。
「どうしたの?二日酔い?」
「…すまん名前」
「え?」
彼が奥の引き出しから取り出したのはしっかりとした作りのアルバム。
「もう、日取りも場所も決まってるんだ」
「…いつ?」
「再来週の日曜です」
名前は絶句するしかなかった。
「悪あがきする時間すら残されて無いじゃん!ダイエットしなきゃいけないのに!礼儀作法も分かんないのに!」
「ちなみに写真は成人式のやつを…」
「ばっちり痩せてる時じゃんか!」
「だって一番可愛いやつだったんだもん!」
「いい大人がだもんじゃない!何ですぐ教えてくれなかったのさ!」
「単身赴任で忘れてました!今話しながら思い出しました!ごめんなさい!」
「最悪!絶対嫌だ!お見合いなんてしない!」
「えぇーー!?」
「なんで本人の承諾無しに決めるの!?しかもその日曜には仕事の打ち合わせがあるのに!手紙書いて!お見合いしないって!」
名前は激怒した。
そして父のケツを蹴飛ばし、怒鳴りながら見合いはしないと断言した。
「まったく!人の意見を聞かないとは民主主義は何処に行ったんだ」
さっきまで原始的に暴れまわっていた姿を鏡で見せてやりたい。
心の中で忠親は思ったが、自分が悪いので殊勝な態度で口を噤む。
地球の中であれば電話をかければいいのだが、いかんせん相手は宇宙だ。
宇宙船に配達してもらうしかない。
その日のうちに彼は手紙を書き、キン肉星へと届けてもらった。
「でもいい機会だ。ダイエットはしよう」