二つと哭く相貌(2)

「おはようございます」
「おはよう名字さん!今日もいい天気だね!あ〜……お見合いはどうだったのかな?」

隠し事のできない上司の素直な態度に、名前は笑顔を浮かべながら報告した。

「相手の方は連絡も寄越さず、お見合いの席にも来ませんでした」
「…え?」
「ドタキャンされました。ドタキャン。土壇場でキャンセル」
「えぇええええええ!?」
「あはは〜」
「あははって…えぇ〜!?」

彼女の口から平然と言い放たれた事実に、入社から世話を焼いていた上司は固まってしまう。
月曜の朝一に聞く世間話にしては内容がヘビィ過ぎた。

「こちらの都合で急遽お休みをいただいたのに、すみません」
「え?い、いや」
「この仕事は大変なことも多いですが、私は好きです。なのでまだ結婚はしないつもりでした」
「え?こ、今回の話は」
「お酒の席で父が…」
「あぁ……」
「お相手の方には、謝罪とお断りの内容の手紙を三度出したのですが返事が無く…それで仕方なく向こうが用意した見合い会場に行ったんです」

でも、結局相手は来なかった。

「声かけてやったのに女が生意気な〜って思われちゃったのかな?」
「そんな…」
「でも、相手を待ってる間考えたんです。今の自分はこれでいいのか、結婚できるのか?って」

まだ働き始めて2年も経っていないのに、すぐ結婚なんて。
今の自分は胸を張って、家を出てもやっていけるのか?相手を大事にできるのか?

「あの時間があったから、自分の改善すべき点を振り返れたんだと思うようにしました」
「名字さん…」
「全て完璧には無理かもしれませんですけど。頑張ります。だから、また今日からよろしくお願いします」

お辞儀し顔を上げた名前は笑っていた。
上司は感動して泣いた。
上司が泣く様子を出社した同僚に見られ、結婚が決まったのかと勘違いされる。
そしてその訂正の言葉で、職場に悲鳴が上げることが度々起こったのだった。

「三食食べて海賊王!」
「いきなりどうしたの名字さん」
「あ、なんでもないです」

ダイエット。
それは行う内容によっては体調を崩しかねない危険なもの。
絶食・過度な運動・特定の物のみを食べるなどが“今“のダイエットの主流である。
ここに生まれる前の時代の記憶では、様々な種類のダイエット法が生まれており、食事をしてもよいものもあった。
名前はカロリーや糖質・塩分に気をつけながら三食食べつつ痩せる方法を取ったので、弁当を持ってきていた。

「いただきま〜す」
「え?!」
「30回噛まないと…1、2、モグモグ」

断食ダイエットをしている別の席の同僚は、彼女のことを気が違った人を見るような目で見たが。

「モグモグ(食物繊維と…ビタミン入ってるでしょ?あ、帰りは歩いて運動しなきゃ)」
「…」

そんな様子には気付かず、名前は自作の弁当に舌鼓を打つのだった。

(自分らしく生活しなきゃ、続かないっしょ)