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「さてさて第二回戦、グロッキーリング始まるよーー!麦わらチーム出場者はイカす剣士とぐるぐる眉毛とかーわいらしい女の子!これはフォクシーチーム優勢だァ!」
「おいてめェ抜けていいぞ」
「いえいえてめェこそどうぞクソ野郎。おれとリリナちゃんのコンビで十分だ」
「仲良くやろう、ね?」

ついにグロッキーリングが始まるのにサンジくんとゾロはいつも通り喧嘩してる。さっきナミがあいつらにチームワークなんてあるのかって言ってたけど、あるんじゃないかなあって思ってる。60%くらい。

「ここで一発グロッキーリングルール説明するよっ!フィールドがあってゴールが二つーー!球をリングにブチ込めば勝ち!ただし!球はボールじゃないよ!人間!!両チームまずは球になる人間を決めてくれっ!」
「てめェら誰が球やるんだ?」
「球かぁ……」
「ん」
「ホイ」
「ん?」

ゾロは自分の後ろを親指で指示した。その後ろにいるのはサンジくんなわけで、サンジくんにボールのかぶり物をかぶせられた。……かわいい。頭に乗るまん丸ボールとサンジくんのあのセットがあたしの心をくすぐる可愛さで目が輝いた。けど、かぶせられた本人は気に食わないみたいでゾロに突っかかった。

「おっと聞こえてきたやつらの入場テーマ曲!これまたグロッキーリング無敗の精鋭!……そうだこいつらに無敗などあり得ない!その名もグロッキーモンスターズ!!今フィールドに……登場ーーオ!!」

聞こえてきた愉快な演奏に合わせて出てきたのは初めてみる大きさの魚人と中くらいこと小さいの。まさにモンスター。小さい中くらいって言ってもあたし達よりは何倍も大きいから見上げるのが辛い。

「さァーー!第二回戦!グロッキーーリング!始まるよー!!」
「不足は?」
「ねェな」
「へぇー無敗かァ……」

無敗の精鋭だって言ってたよね。確かにあれくらい大きかったら怖くなるかもね。けどいくら魚人でもあれより大きい巨人はたくさん見てきたからあんなのは怖くないもんっ。

「我らの誇るグロッキーリング最強軍団に対するは!一回戦でお邪魔軍団を蹴散らした暴力コック、サンジ!!」
「一流コックと言え……」
「6千万の賞金首!海賊狩り!ロロノア・ゾロ!!そしてそして、あの言わずと知れた最強の海賊団白ひげの一味の末娘と言われている風弄のリリナ!!なーんであの子がここにいるんだい!?」
「あたし有名人だ!」

こんな無名の海賊団にまで知られてるなんてあたしも捨てたもんじゃないって事?嬉しい!隣で相手の3人を睨みつけるように立っている2人に気付いて浮かれる気持ちを抑えてあたしも同じように足を開いて腕を組んでみた。


始まる合図としてボールかフィールドかを決めるためのコインが投げられた。向こうがボールを選んだからあたし達はフィールドを選べるけど、フィールドなんてここ初めて来た場所だしどっちも同じだからって今いるこの場所に決まった。

「ボールマンさっさと位置につけ」
「おいおいてめェが勝手に決めただけだろ!まだおれはボールなんて引き受けてねェ。こんなダセェのつけてられるか!」
「なんだよ、じゃあリリナにやらせるつもりかよ。聞いただろボールはあの輪っかにブチ込まれんだぞ」
「誰がリリナちゃんにやらせるっつったよ!リリナちゃんがやるくらいならおれがやる!」
「じゃあお前がやれよ」
「おれが言ってんのはお前がやれって事だ!」
「ゴチャゴチャ言うな!……お!ボール似あうぞ?」
「そんなんでのるかボケ!」

未だにボールマンをやる気はないサンジくんがゾロとケンカ腰に押しつけ合う。こんなんで大丈夫かな。ここは間をとってあたしがボールマンやればいいかな?

「あたしやろうか?」
「リリナちゃんがやるくらいならおれがやる!」
「じゃあお前がやれよ」
「だから!!」

頭から叩きつけられるのはちょっと怖いけど、叩きつけられなきゃいいんだもん。それならあんな奴らには負けないからあたしがやるのに。

「決まんねェからジャンケンで決めるぞ。文句ねェだろ」
「てめェがやれば済んだ話だがな」
「あたしもやる!」
「リリナちゃんはいい!」
「……はい」
「ジャーンケーン、ホイ!ってめェコラ今おそ出ししたじゃねェか!」
「してねェよ!おれの勝ちだ!全てにおいて」
「何言ってんだドサクサに紛れて!ジャンケンの話だろ!」

ジャンケン勝負でもなかなか決まらないなんて、なんでこう負けず嫌いなんだろうお互い同じくらい。なかなか決まらずに言い合う2人を傍から見守っているとナミに呼ばれて、命令が下った。

「サンジくん、そのボール似合ってるよ!ゾロよりもっ」
「やるぜ!ボールマン!おれにこそふさわしい!」
「ホントによく似合う。王子様のようだぜ、アホ王国の」

やっとサンジくんがボールをやってくれるようになったのにまた喧嘩し出した2人についにギャラリーのウソップのつっこみが飛んできた。その後も喧嘩してたけど、やっとサンジくんが相手フィールドの円の中に入ったとこで始まる準備が整った。

「要するに、あのデケェ奴の頭を向こうのリングにブチ込みゃ勝ち……!コックの頭をこっちのリングにブチ込まれりゃ敗けか!」
「いろいろ考えなくて済みそうだね」

「ピーーッ!!試合開始ーーっ!!」

モンスター3人の間からポツリと小さく見えるサンジくんの頭に乗っかってるボールをみたら、さっきくすぐられた胸が疼いてニヤニヤしそうになったけど目を逸らして誤魔化した。ゲームは別、ゲームは別!味方に惑わされるわけにいかないぞ。