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4人を連れ戻してきたとこでナミ達の乗ったボートが島を回って相手のボートより先にゴールに近づいてきた。

「"ノロノロビーーム"!!」

どこからか聞こえた声の後何が起こったのか分からないままレースは終わってた。結果はあたし達の負け。でもなんで負けたのか、どうして相手ボートがすごく速く感じるくらいナミ達のボートが遅くなったんだろう。

「フェーッフェッフェッ……何も不思議がる事ァねェよ。その原因はノロマ光子!」
「ノロマ光子だと?」
「この世に存在するまだまだ未知の粒子だ!この光を受けたものは生物でも液体でも気体でも……!他の全てのエネルギーを残したまま、物理的に一定の速度を失う!!」
「わからん!バカかお前!」
「逆ギレだ……」

理解力のないルフィには今の説明は難しくて悪態をつくとがっくり力を無くして落ち込んだ割れ頭は鼻の高いお姉さんに慰められて立ち直った。

「でも、そんなバカな事が……」
「あり得ない!?わかっている筈だ、この海で、そんなおさない言葉は通じねェ!触れたものみなノロくなる!それがノロマ光子!」
「あァそうやって言えばわかるよおめェ」
「おれはノロノロの実を食ってそいつを体から発せられるノロマ人間になったのだ!聞くよりも見ろこの威力!」

名前を呼ばれたクルーが担いでた大砲を割れ頭に向け撃たれてすぐにさっきレース終盤に聞こえた声が聞こえてすぐに割れ頭に当たるはずの砲弾は、大砲と割れ頭の間にいるあたし達の前を飛ぶように浮かんでる。

「フェッフェッ……光を浴びた全てのものが減速する。人間がこの広い海のどれだけの理屈を知っているというのか……!このノロノロ効果は約30秒だ。その後速度を取り戻す。何事もなかった様に。目を疑うだろうこれが……!ノロノ……」
「……うわっ」

割れ頭が説明した通り30秒が経ったみたいでゆっくり宙を浮かんでた砲弾が勢いを取り戻して結局割れ頭に直撃した。決まらないねぇ、残念。

「……畜生。つまりアレになられたのか……」
「あんなのでレースを妨害されたら……!」
「こいつらのこのゲームへの妙な自信の根源はコレか!フザけた能力もってやがる……!」
「とにかくお前達!わかったでしょ!?お前達は敗けたのよ!!」
「第一回戦ドーナツレース!!おれ達の勝ちだ!!」

堂々と言われて悔しさがこみ上げてくる。何回も言わなくたって、さっきレースが終わった時点で分かってるのに!

「第一回戦決着ー!!さァさァでは待望の戦利品!!相手方のクルー1名!指名してもらうよっ!オヤビンどうぞーーっ!!」

ドロドロとドラムロールがなって指名されるのは自分かもしれないっていう緊張感と不安に襲われて口が開かなくなる。

「まずは一人目……おれが欲しいのは……!お前……!船医!!トニー・トニー・チョッパー!!」
「おれ!?」

割れ頭が指差したのはチョッパーで、指名してすぐ抵抗する暇もなく向こうのクルーに連れていかれて、ステージの上で割れ頭に揉みくちゃにされて椅子に座らせられてる。

「チョッパー!」
「あの野郎狙いはチョッパーだったのか。確かに考えてみりゃあいつは珍獣の中の珍獣……」
「カワイイものマニア!?」
「毛皮マニアじゃないかしら」
「言ってる場合かおめェら!こりゃシャレじゃねェんだぞ!仲間取られたんだ!!」

椅子に座ってあたし達のほうを見つめてくるチョッパーの目は今にも零れ落ちそうなくらい涙でいっぱい。

「みんなーー!!おで……ウゥ……おれいやだーー!!おれは!お前達とだから海に出たんだ!ルフィ!!ルフィが誘ってくれたからおれ……海に出たんだぞ!!おれこんな奴らと一緒なんて……」
「ガタガタぬかすなチョッパー!!見苦しいぞ!!」
「ゾロ!」
「お前が海に出たのはお前の責任!!どこでどうくたばろうとお前の責任!!誰にも非はねェ。ゲームは受けちまってるんだ!!ウソップ達は全力でやっただろ、海賊の世界でそんな涙に誰が同情するんだ!?男なら……!フンドシ締めて勝負を黙って見届けろ!!」

今まで一言も喋らないでお酒を飲んでたゾロのいきなりの大声にしんと静まり返ってそれを聞いてたチョッパーが涙を拭いて垂れてた鼻水を押しこんでから腕を組んでどっしり椅子の上で構え直した。

「よし!!」

それを見てた向こう側のギャラリーがゾロを讃えるように指笛を吹いたりして盛りあがった。涙を流してる人もいればゾロが欲しいって言ってる人もいる。

「……もっともだ。まだ2戦ある。ウチの非常食、取り戻してつりがくるぜ!」
「こういう場面の方が、盛り上がってやる気がでるもんねっ」

ゾロまであげられないよ。次でチョッパーは返してもらうんだからね。次はあたし達が絶対勝つよ。