試合が始まって真っ先にコックにタックルを食らわせようとする中デカを避けていきなりあっちのボールマン目掛けて蹴りかかって行ったんだが、コックの野郎あの巨人の上で足踏みして遊び始めやがった。あのクソコックなめてんじゃねェぞ。おれが一喝飛ばすとそれに気を取られて余所見なんかしやがったからその隙をつかれて殴られてこっちに飛んできた。
「おいリリナお前は攻めるなよ、守れ!」
「……はーい」
「あの野郎……。てめェゴールなんかされやがったら叩っ斬るぞ!」
「うるせェてめェがゴチャゴチャと」
「ゾロ!」
コックを遮っておれを呼んだリリナの声が聞こえると横から中デカにおれがタックルされた。くそっあんなクソコックに構ってる場合じゃなかったか。立ち上がっておれを吹っ飛ばしやがったあの中デカに向かってったらおれの目の前でスピンしてその反動で地面に叩きつけられて、上手く動けねェしイライラする。
「もう。しっかりしてよ」
男の声だらけのフィールドの中に冷静な女の声が遮るように通る。顔をあげると自分より明らかにデカいコックの体を空中で抱きとめてコックを狙っていたマヌケ面の奴に蹴りをかましてやがった。
「リリナ!」
「ナイスディフェンスでしょっ」
親指を立ててにっこり笑うナマエの腕の中で鼻血だらけになったクソコックを地面に下ろした。ヘラヘラしてんじゃねェ、飛ばされすぎだバカ。一言文句を垂れてやると突っかかってきやがってまた言い合いをしているとあの巨人が足の裏にに刃物が仕掛けてある靴でおれ達を踏み潰そうと追いかけてきやがったからとりあえず逃げた。最初に武器はナシだっつった審判にコックが抗議するとワザとらしく目を逸らして下手くそな口笛吹いてたのにイラついて蹴り飛ばした。
「ゾロ来たよ!」
「は!?来たってありゃあからさまな武器じゃねェか!凶器だろ!」
逃げてばかりじゃラチが開かねェって逃げるのをやめて巨人に向かってったんだが、あの巨人の体に足をついたらヌルヌル滑って上手くバランスがとれなくて足が滑ったら止まらなくなってぐるぐる同じところを回った。
「"ヴィントホーゼ"」
どこがどこだか目が回って平衡感覚が失われる中で風を感じていると草の上に降りた感覚がした。焦点があわねェがコックだけじゃなくおれも助けられちまったようだ。
「これ以上遊んでるんならあたしが前に出るよ」
「いやあリリナちゃんには最後の砦として守りを……」
「じゃあしっかりボールをゴールしてきて!」
身体の感覚を戻しながら前に出たがるリリナをどうにか説得して置いてきた。次は問答無用でゴールを狙いに行くという約束をとりつけられたが、お前に出番なんかねェと口を尖らせるあいつを置いてゴールへ向かった。