サニー号に着くと他のみんなは揃っていた。これからのケジメとしてちゃんと許可をもらってから乗りこもうと決めていたのに、ルフィはちゃんと返事をくれる前に強引に連れ込んだ。
けどルフィはもうお前は仲間だから今更挨拶なんていらないって言ってくれた。なにも変わらない笑顔に思わず抱きつくと温かかった。それが懐かしくて涙が出た。それからナミに無理矢理抱きしめられてロビンには頬を撫でられる。みんなに会えて良かった。
沈み始めたサニー号から海面が遠くなってきたけれど、太陽の光は変わらず海中を照らしていて気持ちよさそうに泳いでいる魚達に反射してキラキラ輝いている。何度見ても綺麗だと感じるこの景色は特別だと思う。
ふと思い出したように視界の端にいるサンジくんを盗み見るとみんなと同じように海中に目を奪われていた。バレないうちに目をそらして鞄を背負っていたことを思い出しておろした。
ゾロとルフィがコーティングに傷をつけてしまう前に、とサンジくんが注意事項を説明してもらおうとナミに促した途端に鼻血を噴いて飛んでいった。
「サンジが海に飛び出たァ!」
驚いていると勢いがありすぎてコーティングから海へ飛び出ていったのをなんとかルフィが連れ戻して難を逃れた。
「お前どうしたんだよサンジ!この、女に徹底的に弱くなった感じ!」
「お前らしくねェぞ!」
血を噴きすぎて半分意識がないサンジくんを取り囲むように集まる。ナミが動いただけであんな反応するようになっちゃったなんて2年の間に何があったんだろう、と私の頭の中を代弁してくれるブルックと震えるサンジくんを覗きこんだ。
(あたしだと鼻血出なかったのにな。……ナミは露出が多いから?)
ナミは大胆な服装をしているから、サンジくんは刺激を受けてるのかも。横目で改めてロビンを見ると、やっぱり魅力のあるものが目に飛び込んでくる。あたしは逆に隠してある。もしかしたらこの違いかもしれない。
首元を摘んで自分の体を覗くと、とても代物とは言えないようなものだ。
「ハァ……」
「その中に、なにか隠してるんですか?」
「ぎゃあ!」
ため息をつくと横からブルックが覗いてきて顔にアフロが当たった。咄嗟に胸もとを隠して距離をとった。
「てめェ、ブルック……リリナちゃんの肌は隠れてるからこその魅力なんだ。てめェが、そう易々と拝めると、思うなよ……!」
「おや聞こえていましたか!さすがサンジさんですね」
震える手でブルックの服の裾を掴んで睨んでいるサンジくん。自分よりあたしのことを気遣ってくれる優しさに久し振りに触れた。だけど本人は血が足りなくて輸血してる弱々しくて迫力がない見た目に笑ってしまう。心臓のあたりが温かくなる感じ。
「リリナもブルックもメシにしようぜ!弁当いっぱいもらってきたんだ!」
「食べる!」
テーブルを出して女ヶ島の人達にもらったというお弁当を広げた。ルフィ仕様なのか結構ボリュームのある品々が美味しそうでゴクリと唾を飲んだ。
「全員におれから話しておかなきゃならねェことがある」
おかずをつまみ始めるとフランキーが話し始めた。魚人島への道案内をしてくれるはずだったハチは、一年くらい前にサニー号が海軍に見つかって、守るために戦ってくれたせいで怪我の治療のために魚人島へ戻っているみたい。そしてデュバルも同じようにぼったくりバーでお世話になっている。
2人が戦えなくなった後もこうしてサニー号が無傷でいられているのは、バーソロミュー・くまのおかげ。フランキーがサニー号に辿り着いたときボロボロな姿で座っていて、フランキーを確認するとそのまま歩いて行ってしまった、と。
くまは革命軍の1人だけど、改造されるときサニー号を守り通すという任務を記憶させる約束をとりつけたって話だけど革命軍だからってなんで助けられたんだろう。革命軍のボスはルフィのお父さんだというけどそれでなのかな。……お父さんだったらするのかな。
「今となっちゃ本人にその胸の内を訪ねることもできねェが、心に留めとけ。この一味にとってバーソロミュー・くまは結果的に大恩人だってことをな。……そしてまたいつか出会う日が来ても、くまはもう心なき人間兵器だ……」
パシフィスタとは何度か対面したことがある。確かにくまじゃなかった。くまはもういない。どうして助けてくれたのか聞きたい。いつか、誰かから聞ける日がくるのかな。