pixivにあげた、ゴーストタイプのポケモンに連れていかれかけた夢主と、止めてくれたダンデさんのお話。
※見張り塔跡地でレイドしたときに浮かんだお話ですが、捏造が大きいです。
【設定】
ナマエ
・カフェ勤務
・彼女がコーヒーが美味しいととても人気
・その人気を妬み同姓から嫌がらせ
・店長からセクハラで、毎日しんどかった
・ポケモン知識なし
・チャンピオンダンデにもあまり興味なかった
ダンデ
・変装してコッソリカフェに通いつめていた
うん、なんか仕事でのクレームとかセクハラとかプライベートまで付きまとわれて疲れちゃったなぁ、なんて明るく思いながら家に帰る道を歩いていたはず...だったのに、なぜ私はこんな所にいるんだろ?
ふと気づいた時には、強い紫の光を放つ崩れた、昔は立派だったであろう塔の前にぼんやりと1人佇んでいた。
いや、正確には1人と多数。まるで私の行く末を見守るかのようにポケモンたちがこちらを見つめている。
穴が開いた塔の壁から溢れる光が、朦朧としている私の顔を照らしていて、その底はよく見えない。私があと一歩踏み出せば、きっとこの眩しい光に包まれてしまうだろう。
「あぁ、綺麗だな、」1人でに言葉がこぼれ落ちた。
この光に、触れたい。
そう思った私は、光に向かって手を伸ばしながら足を一歩踏み出した。
踏み出した先に勿論地面の感触なんてある訳がなく。あるのは落ちるという感覚。それを体が感じたとき、
「危ない…!!」
私の腕は誰かの力強い手によって掴まれてしまった。
ガクンッと落下を止められた衝撃で、ぼんやりしていた私の頭はクリアになる。
ハッとして、何事かと下を見るとそこには…
お腹にある口をパッカリと開け、私が落ちてくるのを待ち構えていたポケモンだった。
そのポケモンは邪魔をされたのが気に食わなかったのか、雄叫びをあげながら私に向かって黒い影の塊を吐き出した。
こんな状況でどうしようもないじゃない!
当たったら大怪我どころか死んでしまうかもしれないが、かわしようにも、身動きをしたら落ちてあの口の中に入ってしまうと言うどちらにしても最悪な状態に、ぎゅっと目を瞑った。
今度こそ死を覚悟した私の横を、温かい何かがバサッと通り過ぎた。
「リザードン、かえんほうしゃで撃ち落とせ!」
うっすらと目を開けた私の目に飛び込んできたのは黒い塊と炎がぶつかる瞬間。爆発音が聞こえたあと、そのまま私の意識は、テレビが切れるかのようにプツンと途切れてしまったのだ。
ー…ミ、大丈夫か?…キミ…!ー
誰かに肩を叩かれているような気がして、じわじわと意識が浮上する。
背には草の感触、お腹には温かい、赤い布…?
ようやく目のピントが合ったかと思えば、そこにいたのは白いシャツにジャボ、そしてパンツの上に黒いブーツを履いた紫色の髪の男性。
服だけ見ればまるでどこかの貴族のようなのに、頭に乗せられた帽子がどことなく少年のような雰囲気を醸し出している。
『お客、さん…?』
「気がついて良かった…!」
『どうしてここに…』
私を助けてくれたその人は、私が勤務するカフェのお客さんだった。
その人はパーカーと黒いデニムに帽子を深く被り、毎日訪れる常連さんで、いつも本を読んだりPCを叩いていたり物思いに耽っていたりと色んな一面を見せてくれる。そんな彼は、私が淹れたコーヒーをとても嬉しそうに飲んでくれるのだ。
まさにその人本人が(服装は全然違うが)助けてくれたらしいのだ。驚くに決まっている。
「キミに用があったからお店に行ったら、帰ったと言われたんだ。ふと窓から外を見れば、キミが遠くの方でフラフラとワイルドエリアに出ていくのが見えてね」
慌てて追ってきて良かったぜ、お客さんは小さく息を吐いた。
『すみません…』
「あのポケモンはヨノワールと言って、彷徨う魂を霊界に連れて行こうとするポケモンだ。恐らくキミの弱みが何かにつけ込んだんだと思うんだが、心当たりは?」
心当たりなんて、あるに決まってる。仕事も、人間関係も、プライベートも何もかも…
でもポケモンに呼び込まれてしまうくらい参っているなんて...
お客さんに迷惑をかけてしまうのはわかっていても、考えれば考えるほど情けなくて悲しくて、私の目からは涙が溢れてしまった。
「よほど参っているらしいな…」
ふむ、とお客さんはうなずいた後、男らしい大きな、それでも優しい指先で私の涙を拭う。
「オレはキミに用があって御店まで行ったと言った」
『…グス…は、い…』
お客さんに涙を拭ってもらうなんて、手が汚れてしまう…そう思うのに、深く被られた帽子の隙間から見える、口を開く事を許さないというかのような眼差しに負けて、ただ相槌を打つことしか出来なかった。
「これを、キミに」
お客さんの内ポケットから出てきたのは一通の書類。そこに記されていたのはナマエ様から始まる堅苦しい前置きと、
『是非、我が社 バトルタワー オーナー専属秘書としての入社をお願いしたく……』
用紙1番下には
バトルタワー オーナー ダンデの文字の横に大きな印鑑…
『ダンデ…?ダンデって、あの有名なダンデさん?』
「あぁ、そのダンデだと思うぜ」
『なんでそのダンデさんが、私を秘書に…?会ったこともないのに…』
「会ったこともない…か…」
ちょっと落胆したようなお客さんは、私のお腹の上にかけてあった布をそっと外し、そのまま勢いよく自身の腕を通した。
そのままテキパキとボタンを止めたかと思えば、被っていた帽子を空高く放り投げる。
舞い落ちる帽子の下、左手を高らかにあげたその姿はまさしく『元チャンピオン…?』で。
驚くことしかできない私を前に、元チャンピオンは空から落ちてきた帽子を華麗にキャッチし、そのまま口元へと当てて
「オレはずっとキミを見ていたんだが、気付いて貰えていなかったようだ。毎日キミに会いに通っていたのだが…」
と表情が窺えないまま続ける。
「これからは、オレだけのためにコーヒーを淹れて貰いたい」
そのまま、首をほんの少し傾けながら低い声がその帽子の中で紡がれた言葉。
「それで、バトルタワーオーナーダンデからのへの返事は?」
彼の口元は見えないはずなのに、
どこか有無を言わせないような、
どこか獲物を狩る獅子のような、
それでもって先程のように私を救い上げようとしてくれている優しい匂いがして、
私はヨノワールよりも、とんでもない人に目をつけられてしまったのでは、とパンク寸前な頭で思った。
オ レ のもとへと来てほしい
オレ→ヨノワール、ダンデとかけております
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