暫くナックラーにポロックをあげていた彼女は、
『じゃぁ、私は帰るね。服も着替えたいし』
といい、立ち上がった。
その言葉にキバナはハッと気がついた。
(そうだ、こいつ、雨の中ギャラドスの手当してたからずぶ濡れだったんだ)
彼女への興味が先に出てしまい、彼女の様子に気がつかなかったがかなり寒そうだ。
まだ子供だから良かったものの、彼女の服は身体に張り付いている。
大人のキバナだったら質問よりも先に彼女の服をなんとかしただろうが、幼い頃のキバナは異性よりもポケモンバトルが大事で、一度も女の子を意識したことがなかったのである。
それはきっと、今もどこかで迷子になっている友人も同じだろうが…
そのとき、
グルルルルルル
と鳴き声がした。
『ジグザグマ…?』
警戒した彼女はキョロキョロしたが、周りには温厚なポケモン達ばかりで、こちらに向かってくるようなポケモンはいなさそうだ。
『?』
なんの音だったんだろうと疑問に思いながら顔を正面に戻すと、
両手をお腹に当てて、恥ずかしそうに下をむいているキバナの姿があった。声の出所はここだったらしい。
『お腹、すいてるの?』
「朝家を飛び出してから、何も食べてない」
キバナは下を向いたまま、目線だけちらりと彼女の方にあげる。
「なぁ…お前、着替えは…?」
『持ってないよ』
「……」
そのまま目線を横にやりながら、何かを言おうとしているキバナはとても恥ずかしそうだ。その証拠に、もごもごと何かを口籠っている。何かあるのかと待っていると、キバナはようやく言葉を発した。
「もし、良かったら…キャンプでカレー、作らないか…?
街まで結構距離あるし、その間ぬれたままキツいだろ?
着替えなら、オレ持ってるし。オレのテントで着替えたらいいし…
も、もちろんオレはその間きのみとってくるから安心してくれ…!」
早口にそういいったが、彼女は聞き取ってくれただろうか…
心配になって、顔すら見ることが出来なかったが、
『いいの?』
という声にやっと顔をあげられた。
「あぁ…!」
『ありがとう…!!』
私、誰かとカレーを作るなんて初めてだから嬉しい…!
そう満面の笑みを向けられたキバナは、自分の胸一瞬高鳴ったような気がした。
「お、おう…」
キバナ自身気づくことはなかったが、その時の彼の表情はカジッチュのように真っ赤だった。
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