04

彼女の話を興味深く聞いているキバナに、
『あなたがさっき聞いていたこのスティックはお父さんとお母さんの形見』
彼女は先ほどキバナが尋ねていたスティック状のなにかを取り出した。

「形見って…お前…」
彼女が発した一単語でキバナは今までとは違った意味で目を見開いた。

『うん。今よりもっと前に死んじゃった。ホウエン地方にいったのは確かなんだけど…ある日突然、私は置いて行かれちゃったから、詳しいことは知らないの』

少し目尻を下げて寂しそうに笑う彼女に、キバナがなんて返したらいいのか分からなかった。

『あ、でも大丈夫!今はローズさんが時々うちに来てくれるから!オリーヴさんも!』

キバナが困っていると察したのか素だったのかは分からないが、彼女はパッと笑顔に何気なくそう言ったのだろうがキバナにしてみれば、大問題である。

「ローズさん!?ローズさんってあの!?」
『どのローズさんか分からないけど、あなたがイメージしてるローズさんであってると思うよ』

この少女と出会ってから驚かされることばかりだ。
いろんな情報についていけないのか、
嘘だろ、とかオレと年齢かわらないのに、とか1人でぶつぶつ言っているキバナ。

すると彼女は再度スティックを振りながら、
『すっかり話が逸れちゃったけど、これの話だったよね?』
とキバナの目線まで持ち上げた。

『あなたのナックラー、ちょっといいかな?』
そのままキバナに断りをいれると、スティック状ものを数回振る。
すると中から、小さな四角いキューブが転がり出てきた。
彼女は自分の手のひらにそれを乗せ、ナックラーの前にしゃがみ込んだ。

『はい、どうぞ』とにっこり笑ってナックラーの口元に手を差し出す。
「?」
暫く匂いを嗅いだり、短い前足でちょいちょいと突いたり…
一通り観察し、危なくないと判断したのか、ナックラーは差し出されたキューブを口にした。
その途端ナックラーは
「クラッ!クラララッ!!」
ひときわ大きくなきながら、小さな身体でめいいっぱいの喜びを現わし始めたのだ。

『おいしかった??』
彼女が聞けば、頷きながら彼女にすり寄った。

(嘘だろ…オレさまのナックラー、結構味にはうるさいんだぞ…!?)
狐に包まれたかのように呆然としているキバナに、彼女は立ち上がりながら言葉を紡いだ。

『これはポロックっていって、ホウエン地方で使われてて、ポケモンのお菓子みたいなものかな。きのみを数種類ブレンドして作るの』

「でもお前、さっきのギャラドスに、薬みたいな感覚であげてなかったか?」

『うん。ホウエン地方では5種類しか作れないみたいなんだけど、
ガラルはきのみの種類が沢山あるのと、お父さんとお母さんが残したメモもあったから…

怪我の治りを早くするお薬成分が入ったもの、毛並みを整えるもの、
身体作りに役立つものとかいろんな種類が作れるようになったよ』

これで質問は全部答えたかなと呟いたとき、彼女の身体がぐらついた。
驚いて彼女は自分の足下をみて、笑みを溢す。

キバナもつられて彼女の足下を見ると、ナックラーだった。
ナックラーは、さっき貰ったポロックがもっと欲しいのか、
彼女の足に抱きついて、普段からきらきらしている瞳をさらに煌めかせている。

(そんなに美味しかったのかよ…)

あまりにキラキラした瞳で彼女を見上げるものだから、つい「なぁ、それって人間は食えないのか…?」なんて間抜けな質問をしてしまい、

ぽかんとした顔の彼女に『食べれないよ』言われ、赤面するのだった。

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