故郷を裏切り、こんな処に身を寄せている時点で、自分がさぞ汚れていることなど理解しているつもりだった。基本他人にはドライであるのがポリシーであり、手の届く範囲ならまだしも特段関わりのあった訳ではない人間が何がどうなろうと知ったことではないと思っていた。
前回の大きい任務が終わってからというもの、中々寝付けない日々が続いていた。それはきっとこの達成感と、どことない自身への反省点から来るものと思われる。そんな中でも、その日はとても目が冴えていた。夜風にでも浴びに外へ出ようかとベッドを降りたところ、▲▲に手を掴まれた。
「起きてたのか、うん」
「どこ行くの」
▲▲は最近暁に入った女で、仲間に手を出すのは良くないとわかっていながらつい手が伸びてしまった女だ。▲▲にも部屋は与えられているが、いつもここへ来て共に寝ている。とても中途半端な距離感であることは重々承知している。
「ちょっと気分転換」
「寝れないの?」
首を縦に振れば、▲▲もゆっくり起き上がる。そして、▲▲の華奢な指が近づいてきたと思えば、涙袋をそれがなぞる。
「クマがひどい」
「そりゃしょうがねぇ」
▲▲はしょうがなくないよ、と言うとベッドへ戻る。ここへ来て、と自分の隣をポンポンと叩くので、さっきまで居たのにもうぬるくなってしまった場所へ戻った。
「横になって、目を閉じて」
言うことを聞けば、▲▲の手が瞼に触れる。少し冷たくて、そして▲▲の優しい良い匂いがして、久しぶりに頭が考えることをやめた気がする。瞼に映るのはあの日の凄惨な…。
「私達だって心があるの。当然仕事とはいえ他人の命を奪うことは心にダイレクトに受けてしまう時もあるよね」
ドキドキと鼓動がはやくなり、呼吸は浅くなる。折角心地よくて久しぶりにちゃんと寝れそうだったのに。
「でも、私達の仕事ってそういう仕事なの」
「わかってる」
「とはいえ、心が不安定になったら休息も必要よ」
「そんな甘えたことできるかよ」
だろうね、という言葉と共に体が▲▲
に包まれる。さっきふわりと鼻腔を掠めた▲▲の香りが強くなる。それと同時に鼓動も戻り、何かが軽くなった気がした。
「お前の分野が回復じゃねぇのがしっくりこねぇな、うん」
「だとしたらデイダラくんにしか効果はないと思うよ」
2人で小さく笑うと、そのまま久しぶりに眠りについた。
お前は不思議な女だ、うん。