▲茜色に染まる

外階段の手すりにもったりと身を預けて、大して綺麗でもない気に入らない街を眺めながらタバコに火をつける。ぷかぷかと浮かぶ紫煙は冷たい風に流されて消える。ふと、私のタバコの煙で作った雲の下に上司の姿を見つける。
「コイツうぜえんだよな」
もしこのまま指で挟んだコレを落としたら、フサフサと生えるアイツの頭皮を燃やしてくれるだろうか、なんて。
「お前、意外とブッソーなんだな」
「ひやぁあ!」
「びっくりしすぎだろォ」
「あ、…あらきたさん、お疲れさまです」
「ん。おつかれ」
差し出された缶コーヒーは私が最近気に入っているブラックコーヒーだ。
「いいんですか、ありがとうございます」
「もらったからァ」
まだしっかりと暖かいそれは、きっと貰い物なんかではなくて下の自動販売機で買ってきてくれたのだろう。
「いいなぁ、コレがもらえるなんて。美味しいんですよ、コイツ」
「フーン」
さして興味もなさそうに適当な返事を打つと、荒北さんは私の隣で背中から手すりに寄りかかった。そのまま天を仰ぐものだから、まるでドラマで見るかっこいい上司のようだ。まあ、かっこいいんだけど。
「しかし、盗み聞きとは良い趣味してますね」
「別にィ。聞きたくて聞いた訳じゃねェし」
そもそも、聞かれたくないなら声に出すなよ。と言うとニヤリと笑いながら目線だけ私へ落としていた。
「声に出してたつもりはなかったんですけどね」
「バッチバチに喋ってたぞ、お前」
「えー!まじっすか」
「大マジに。…ちなみに、」
荒北さんはゆっくりと手すりから身を起こすと、私の頭に触れる。わしゃわしゃと撫でられた頭は冷たい風に吹かれてひんやりし始めていた私の頭を温める。
「かっこいいとかも、聞こえてたけどォ」
心なしかいつもより優しいような、嬉しそうな、満足そうな、否それは私の願望が入っているのだろうか。口角を上げた荒北さんは、あんまサボりすぎんなよ。と一言残して事務所へ戻っていく。
いやいや!
「まじか私!!」