▲押したら引く

「何見とんねんお前」
胡座をかいてスマホに向かう私の上から画面を覗き込むこの男にデリカシーというものはないのだろうか。
「人のケイタイ見ないでください」
「ええやん。気になんねやから」
ひょい、と私から容易くスマホを回収した画面に映るアイドルユニットに視線を向けると、気に入らなさそうに目を細めて口を半月型にするとジロリと私を睨むように見つめる。
「…なんですか、」
「こんなんがええんかいな」
「失礼ですね、隊長よりよっぽどかっこいいですよ」
頬に空気を溜めて不満を丸出しに隊長の手からスマホを奪い返してキッ、と睨みつければ、隊長もまた不服そうにこちらを見ていた。
「聞き捨てならんな」
「こんなんって言われたんでね」
「誰やねん、それ」
「現世で流行ってるらしいですよ」
「ふーん」
隊長はもう一度私のスマホを取り上げると、机に置いて私の顎を掴んで、ほんで、と言葉を続ける。
「俺よりええ男やて?」
「……隊長、怒ってます?」
「気分は良うないわな」
「ふーん」
「なに嬉しそうにしとんねん」
「嫉妬かなーと思って」
「やかましいねん」
気まずそうに視線を逸らしたかと思えば触れ合った唇に鼓動が跳ねる。
「たいちょ、」
「お前は俺だけ見てたらええねん」
「それって、」
さっきまで気恥ずかしそうにしていたのがまるで嘘のようにニヤリとしてやったりの表情を浮かべた隊長は、ヨシヨシとわざとらしい言葉を吐きながら私の頭をがしがしと撫でる。
「人のこと好きや好きや言うてつけ回しとったんはお前やろがい」


main * JACKALOPE