▲執着

「もう行くんですかィ」
少しぐらいゆっくりしてきゃいいのに。なんて言葉が後続して、そんな自分に自分が1番驚いている。なまえといえば、"そんなコト"にも慣れたように笑って、ゆっくりしたってしょうがないじゃん。なんて身なりを整えている。
「飯とか」
「珍しすぎるでしょ」
「やることだけやってさっさと帰るなんて、ちと冷たすぎるんじゃねェの」
最初はヤレる丁度良い女だった筈のなまえが、気が付けばいつもどこか頭の中にいて、さっさと帰る物分かりの良い女だった筈のなまえが、いまではとても非情て冷酷な女にさえ感じる。
「総悟もしかしてさ、私のこと好きになった?」
「んな訳ねェだろ」
「ふーん。やたら行って欲しくなさそうだから、てっきり好きになっちゃったのかと思った」
好きに"なっちゃった"だなんて、まるでそれが禁忌のように紡ぐ言葉選びは今の俺には残酷すぎる。傷付いた心を自分に誤魔化すように、鞄に掛けたなまえの手を握る。
「悪ィ、もっかいシたくなっただけでさァ」
だからまだ行くな、と言って唇を触れ合えば、なまえの鞄を握る手から力が抜ける。
「……最低、」
「どっちの事言ってんですかィ?」
まるで"彼女"にするように姫抱きをしてベッドに放ると、何かを探るような目で俺を見つめる。
「やっぱ好きでしょ、私のこと」
「自惚れが強い女でさァ」
「え〜?結構自信あるんだけど」
「いい加減煩せェから黙らせてやりまさァ」
覆い被されば嬉しそうにきゃっきゃと俺の背中に手を伸ばすなまえは本当に"コト"が好きで困る。
いい加減俺だけで満足しろよ。


main * JACKALOPE