ドラゴンと共に。

散見する星よ



珍しく取れた休みの日、僕はベッドに転がっていた。


『あ〜……疲れたぁ』


「お疲れ。オレも疲れた〜」


覇気のない声が同調して部屋に響く。
隣でぐでっとしているのはこの街を治める竜。
幼馴染であるそいつはキングサイズのベッドに転がりタレ目を更に垂らしていた。
女の独り暮らしにこんなサイズは普通は要らない。けれど良くベッドに潜り込むのがキュウコンなので、家具屋で売っているポケモン用のベッドなのである。
いや、普通はほのおタイプだしそんなに大きくないし良いのでは?って思うだろうけど。
ウチのキュウコンはアローラ出身の父のキュウコンの子だ。
こおり・フェアリータイプ。


つまりくっ付いて寝ると寒い。


でもロコンの時から一緒に寝ていたし、進化したからって床で寝かせるのは此方が寂しかった。
なのでキュウコンとゆっくり眠れる様に、広いベッドなのである。これなら一緒に寝ても凍えない。
その広いベッドに今転がっているのが1.9mはあるドラゴンなんだが。


「何か随分萎れてんなぁ。どした?」


『古代文字の解析で完璧手詰まり…古代ガラル文字と別のものを混ぜ込んだみたいな新手とかほんとなんなの…』


「あー…あるあるだな。突然現れる新発見の文字」


古代ガラル文字ならば考古学者の端くれである以上、当然読める。しかしそこに突然全く意味の判らない記号をぶっ込まれてしまえばどうなるか。
それは勿論、読み解けなくなる。
それが何を示す記号なのか。何処に配置すれば正しく機能するのか。何時頃現れた文字なのか。
非常に好奇心を掻き立てられる事態だが、手許に資料がなければお手上げとしか言えないのだ


「資料漁りたくなったら言いなよ。司書にはオレから言っとくからさ」


『その顔パス認証が今日は機能しないのは何故なんでしょうか』


「いや、今日は休みですよフィルちゃん。休日まで研究とかオレさまが許すとでも?」


『やだこのドラゴン使えない。帰れば良いのに』


「帰っても良いけどそん時はもう宝物庫出禁な」


『ごめんなさいキバナ様どうぞ好きなだけおくつろぎください』


「ん。よきにはからえ」


『なんだおまえ』


「キバナ様だわ」


ごろん、と転がって隣にぶつかる。
昔は殆ど変わらなかった筈なのに、今や彼はそこらのポケモンよりも大きい。
もぞもぞと隙間に潜り込み硬い腕を枕にすれば、呆れた様に小さく笑う。


「なーにしてんの」


『キバナを枕にするんですけど』


「オレの許可は?」


『要らないかなぁ』


「要るわー。一回五千円でーす」


『うーん、何とも言えない値段』


普通に高いが、相手がガラルのトップジムリーダーとすれば安い様な。
長い腕がピンクの毛布を引き寄せる。それをしっかり僕に掛けると、自分はキバナ用に置かれていたオレンジの毛布を被った


『どうもー』


「どういたー。あ、来週のエキシビ来る?オマエ確かチケット外れたんだろ?」


『えっ、行きたい。でも僕関係者でしたっけ?』


ジムリーダーが持っているのは関係者用のチケット。それこそ家族とか呼ぶヤツ。
それをわざわざ僕なんかに良いのかと問えば、二度目の呆れた顔を向けられた


「十分関係者ですけど?」


『えっ』


「えっ」


『幼馴染では?』


「その時点で十分関係者だし、ナックルお抱えの考古学者なんだから寧ろ関係者でしかない」


『あ、なーる』


そっか。僕はこんなんでも一応ナックル市長から公認考古学者として雇って頂いている。
それなら関係者席に行ってもキョドらなくて済む。良かったー


「何だろ、オレさまの幼馴染変なトコでポンコツだわー」


『ポンコツ言うな』


睨み付ける僕を意に介さず、キバナはへにゃっと笑って頭を撫でてきた


「はいはい、フィルちゃんはバカワイイですねー」


『おい悪口』


バカって言ったろ今。

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