油の中でぱちぱちと音を立てながら水分を飛ばす鶏肉。時折引っくり返しつつ眺めていると、がちゃりと鍵が回される音が聞こえてきた。
扉の開閉の後、ひょいと此方に顔を覗かせたのは最早親の顔より見慣れたタレ目で
「ただいまー。今日のご飯何?」
『おかえり。唐揚げでーす』
「塩麹とにんにく醤油?」
『何のお祝いだよ面倒臭い。にんにく醤油一択だって』
「えー南蛮も食べたい」
『…判った。唐揚げと南蛮にするから手洗ってきて』
「はーい」
食い意地の張っている幼馴染はワンパチスマイルを浮かべながら洗面台に向かった。
いや、仕込みの時点でにんにく醤油一択だったんだよ。だから鶏肉は全部にんにく醤油に浸けたし、そもそも塩麹を切らしていた。僕はにんにく醤油派。塩麹は覚えてたら今度作るね。
サクサクに揚がった唐揚げを一つ摘まみつつ、リビングにやって来たラフモードのキバナにも差し出してやる
『熱いからねー』
「はーい」
大きく開かれた口の中に唐揚げを放り込む。もぐもぐと顎が動いて、へにゃっと蕩けた。あー、ヌメラスマイル
「うっっっっっっっま!!」
『それは良かった。お皿出してー』
「へーい」
ニコニコ笑いながら準備を手伝ってくれるキバナから唐揚げに目を戻す。
全て揚げ終えた所で酢醤油を作って唐揚げを浸し、皿に盛る。
それをキバナに運んで貰い、ご飯とお味噌汁をよそう。ポケモン達のご飯も一緒だ。
準備を終えて席に着く。向かいに座ったキバナがにっこにこで手を合わせた
「いただきます!」
『どうぞ、召し上がれ』
僕もいただきますと手を合わせてからお箸を手にする。先ずは野菜から食べよう。
サラダを小皿によそって、ついでにキバナにもよそって。
その間に早速唐揚げを大きな口で迎え入れると、キバナはへにゃっと笑った
「んまー!!」
『そっか、良かった』
わーヌメラだー。
嬉しそうなへにゃへにゃ顔でぱくぱくと唐揚げを頬張る推定190cmオーバーに僕も笑いつつ、ゆっくりとレタスを咀嚼する。
たった二人の食事なのに量がエグいのはドラゴンタイプのワンパチの所為。だってこいつ二人前は食べる。お気に入りの料理を出すともっと食べる。
本日のメニュー、唐揚げはキバナの好物なので、やっぱり勢い良く吸い込まれていく。
別に掻き込んでいるとかそういう訳じゃないのだけれど、僕がサラダを食べ終えるまでに唐揚げ五個と白米半分、サラダ三分の二とお味噌汁少量、それから冷奴が複数キバナの胃袋に消えていた。早くない?
「この甘酸っぱいのが良いんだよなぁ。サラダのドレッシングもさっぱりしてて美味い」
『ドラゴンシェフチョイスのドレッシングです』
「マジか。相変わらず食に対しての入れ込み凄ぇなオマエ」
「ギャウ」
キバナにベランダから返事をしたのはサザンドラだ。最近彼はワイルドエリアできのみを漁り、それを組み合わせる事に凝っている。
彼はモノズの時からきのみにうるさかったので、まぁ予想は出来てたけど。
でもさ、何も言わずに進行方向ワイルドエリアはやめよう?君しか居ないのに砂塵の窪地はやめよう?キバ湖の瞳もやめよう?トレーナー最近胃が痛いから。
『もうね、最近はきのみ収穫の為に勝手にお散歩行こうとするの。その度に中断する研究よ…』
「あー……それはしんどいな。一昨日もきのみサザンドラが出たって報告上がったぞ」
『その節は大変お世話に…』
一昨日もしれっと家から飛び出した彼は鯖折りベアーを叩きのめしてお目当てのものを持ってきたらしい。
因みにそこにはキテルグマに襲われていたトレーナーも居た。しかしサザンドラはトレーナーには目もくれず、顔の付いた手で木を揺すっていたそうな。
僕がそれを知ったのは彼がつやつやのきのみを抱えて帰ってきてから。
キバナからの連絡でそれを知り、ついでにサザンドラが喧嘩を売ってきたバンギラスとキテルグマにはかいこうせんをぶちかましていた事を知り胃が痛くなった。
やめてよ…野生相手のバトルで反動技とか怖いからやめてよ……トレーナー居ないのにはかいこうせんとかやめてよ…動けない時に襲われたら危ないじゃん…帰ってきた時は無傷だったけど…
『しかもきのみサザンドラって…なにその渾名』
「人間には目もくれずにきのみを採ってるサザンドラなんてアイツぐらいだろ。オマエの手持ちだし、アイツの性格からしてちょっかいさえ出さなきゃ安全だし。
ホントは風呂敷サザンドラと迷った」
『あ、うん。きのみサザンドラが良い』
風呂敷サザンドラはなんか…ねぇ?確かに彼の首には水色のスカーフを巻いてるけども。
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