ドラゴンと共に。

僕という存在について



僕は所謂転生者だった。
思い出したのはジムチャレンジが終わってから。
バッジを全て集めトーナメントには進んだもののキバナに破れた。
その後控え室で泣いていたら急にアップデートされた感じだ。


えっ、剣盾じゃん???


それが最初の感想である。
幸い現在の僕が前世という名の物語を読んだ様なインプットであったので、前世の僕が入って今世の僕を消去する、なんて事態にはならなくて良かった。
改めてポケモンという存在に目を輝かせ、それからふと、気付いてしまったのだ。


この世界、ボカロないね??????


嘘だろ千本桜ないの?ヒバナも?アイネクライネもメーベルも砂の惑星もオートファジーも?てかあれだね?米津も居ないね?
この世界ジブリもないね?アンパンマンもキティちゃんもスヌーピーもFGOもワンピもコナンもデジモンもないね?


えっっっっっっキレそう。


オタクから趣味奪ったらただの喪女ぞ?嘘だろ?
僕は盛大に落ち込んだ。酷い、酷すぎる。
こんな事なら前世なんて思い出したくなかった。娯楽に溢れ過ぎだろ前世、此方なんぞ修羅の国だぞ。ワイルドエリアとかいう鯖折り機が徘徊する大殺界が直ぐ傍に鎮座してんだぞ。ピンクな熊はルカリオとジャラランガが野生のサンドバッグだと思ってる節があるけども。
落ち込みながらイーブイを撫でくり回していると────天啓が舞い降りた


そうだ、ないなら作れば良いじゃない。


ボカロがない。それなら楽曲を作れば良い。
幸いこの世界にもパソコンの音楽製作ソフトはあった。
トーナメント以降突然パソコンに向く様になった僕を、キバナは不思議そうに見ていた。
前世特典というヤツなのか、楽譜も読めなかった僕は何故かサラサラと五線譜を埋められた。曲を思い浮かべるだけだ、それだけで指が勝手に動く。
思い浮かべるのはワンフレーズで良いし、歌詞も勝手に埋まるのでうろ覚えでも問題なし。
マジか…ありがとう神様……恨むのやめるね…
一心不乱にマウスを走らせ────とうとう千本桜は完成した。
とはいえ此処にボカロはない。つまりは曲だけ、となった所でキバナが画面を覗き込み、言った


「なぁ、これオマエが歌ってオレにくれない?」


『え』


その時何やかんや丸め込まれ、僕の声で歌われた千本桜はキバナの手に渡った。
要求は音源と歌だったので、不思議には思っていたのだ。
まぁオフボーカルで聴きたいのかな、なんて呑気に思っていた、その時は

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