ドラゴンと共に。

ファンが狂うのはこいつの所為



それから何やかんや、キバナが交渉して僕は大手レコード会社の作曲家となった。
後日、レコーディングスタジオで収録した千本桜がシングルとしてバカ売れして、即座に次曲の製作が決まった。
歌は世界を越えるというのが立証された瞬間である。


『次はどういう路線で行こうかな。可愛い系かシャウト系かガチ恋系かしっとり系か』


「ガチ恋はやめてくれ。刃物握ったガチ恋勢がジムに押し掛けてきたアイヲクレ騒動を忘れたとは言わせねぇぞ」


『それ言ったら子猫ちゃん()が大量発生した眠れない夜事件を忘れるな。僕をキバナの彼女だって勘違いした子猫ちゃん()が会社に来た時ヨノワールの迎えが見えたんだから』


「それマジなヤツ。イーブイがフォルムチェンジしてブラッキーになってかみくだく食らわせてサザンドラとルカリオとゾロアークがあくのはどうかまして最後にライハンがかみくだくした弱点ガン攻めオーバーキル案件のヤツ」


『バンギラスがかみくだくでもなくはかいこうせんの構え取ってたのは流石にビビったよね』


「オレさまのスウィーティーの相棒達すーぐはかいこうせん撃つ」


しかも狙ってたのは目を回すヨノワールではなく子猫ちゃん()だった。
歌手、KIBANAのデビュー曲は千本桜、次曲はメルト、その次は太陽系ディスコ。
それ以降もキバナが気が向いた時に彼自身がチョイスした曲を出し、とうとう1stアルバムの製作が決まった。怒濤の勢いである。
幼馴染はガラルの誇るトップジムリーダー、人気なのは当たり前だった。


最初は僕もキバナが歌ってくれて、おまけに皆に喜んで貰えるならと積極的に曲を譜面に書き起こしていた。
キバナも楽しんでレコーディングしていたし、PVもノリノリだった。正直滅茶苦茶楽しかった。天国だった。
だって完璧超人がボカロを嬉々として歌ってくれるのだ。ダンスだってこなして見せるのだ。これを天国と言わずどう表せというのか。
しかし、僕のシャングリラもキバナが成長すると終わりを迎えた。


歌の内容を真に受けたメンヘラ女が特攻をかます様になったのだ。


当初はいやいや、音楽が事実とは一言も言ってませんけど???みたいな気分だった。
中の人の歌をメインにしているのは僕が聞きたかったのと、同じ声帯なら無理なく歌えるだろうという安直な考えからだ。
変声期を迎えた事で低音が安定した…というかアニポケのキバナの声になったのが最たる理由。


それまでのキバナは鏡音系や初音系のアップテンポなものがメインだった。
そこから路線変更も兼ねて様々な曲を用意して、選ばれたのが問題の楽曲だ


取り敢えずキバナにはラブソング系とロック系を歌う事に慣れて貰おうと中の人の歌を当てていたのだが、どうやら僕のチョイスはキバナの女に四倍弱点で刺さったらしい。
幼馴染だと言ってるのに会社にキバナの女が乗り込んできた時は何が起きたかと思った。即座にうちの子達が制圧したけど


「次はアガるヤツが良いな。アイヲクレも癖になるメロディーなんだけど、歌詞が……」


『キバナはメンヘラ製造機だから仕方無いね』


「製造機にした張本人がそれ言う???」


楽曲ファイルを捲っていた奴の唐突の真顔よ。
というかどんな曲でもメンヘラは製造されると思うの。確かにアイヲクレはチャレンジャーだったけども。でもやっぱりどんな歌でもファンは発狂する。
だって歌うのはこの完璧超人だから

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