15



「上を行く者には更なる受難を。
雄英に在籍する以上、何度でも聞かされるよ。これぞ、Plus Ultra!」


こんなにも上を取った者に厳しいルールもないだろう。
本選進出者のみが残ったフィールドに、ミッドナイトの声が響いた


「予選通過一位の緑谷出久くん!持ちポイント1000万!!」


皆が皆、出久を見ている。
確かにポイントは桁外れ。でも正直、こんなに狙う者が多いなら、他を狙って落とした方が堅実な気もするけど…


「制限時間は十五分。
振り当てられたポイントの合計が騎馬のポイントとなり、騎手はそのポイント数が表示されたハチマキを装着!
終了までにハチマキを奪い合い、保持ポイントを競うのよ」


やはりそうか。
このルールなら、一番狙われる出久は敢えて放置して、序盤は他のポイントを狩った方が堅実だ。
狙えたら出久、くらいの考えじゃないと、1000万に執着すれば足許を掬われてしまう。


「取ったハチマキは首から上に巻く事。
取りまくれば取りまくる程、管理が大変になるわよ!
そして重要なのは────ハチマキを取られても、また騎馬が崩れても、アウトにはならないってところ!」


『嘘でしょ…』


「て事は…」


「四十二名からなる騎馬、十〜十二組がずっとフィールドに居る訳か…?」


「シンド☆」


大分想定外だ。てっきり、ハチマキを取られた者から脱落するシステムだと思い込んでいた。
出久の様に最初から高得点なら勿論、大量にハチマキを保持しても率先して狙われる。しかし、勝ち上がる為には高得点を狙わなくては。
随分と攻めどころを考えさせられるルールだ


「一旦ポイント取られて身軽になっちゃうのもアリだね」


「それは全体のポイントの分かれ方見ないと判断しかねるわ、三奈ちゃん」


「個性発動アリの残虐ファイト!でも…あくまで騎馬戦!!
悪質な崩し目的での攻撃等はレッドカード!一発退場とします!」


悪質な攻撃はレッドカード、ただしそれほどじゃない正当な攻撃なら許される。
いや待って?私マジで大丈夫?
出久を除いたら三番目に高いポイントだよ?マジで?生き残れる?
絶望の中、ミッドナイトの始まりを告げる声が響いた


「それじゃこれより十五分!チーム決めの交渉タイムスタートよ!」


「「「『十五分!?』」」」













今から十五分。終わった…
頭を抱えた瞬間、がしっと腕を掴まれた。
驚いて顔を上げれば、勝己が至って普通の表情で私を見下ろしている。


『勝己?』


呼び掛けると、薄い唇が開いた


「俺と組め」


『え?』


思わず固まった。
固まって、はっとして、それから目を丸くする。


『いやいや、待って?
騎馬戦だよ?勝己騎手でしょ?私非力だし、個性使っても役になんか立てないよ』


勝己の性格上、騎手は当然だ。
そして先ず、一位の出久に向かう筈。
ついでに勝己の戦闘スタイルから見ても、爆破で飛んでハチマキを取りに行く変則型だ。
そうなれば欲しいのは、耐久性のある騎馬。
間違っても私ではないのである。
そこら辺も含めて拒否したのだが、勝己は怪訝そうに首を傾げた


「そこまで判ってンならとっとと頷け」


『え?』


「俺が飛ぶのに負荷が掛かんのは前騎馬だ。お前は後ろ」


『後ろ…』


「お前の担当は俺が取りに行ってる時のサポート、周辺への妨害、あとは半分野郎対策」


『…轟くんの?』


あの氷と炎相手に?私??正気か???
ぽかんとすれば、すかさずデコピンされた


「さっきの氷を汚染するとか言っとったヤツ。あれ、半分野郎に使えば良いだろが」


『あっ』


「あとは」


額を弾いた手が頭に乗り、ぐしゃりと掻き混ぜられた。
紅い目が、真っ直ぐに此方を見下ろしている


「俺の指示がなくても、俺が考えてンのと同じ動きが出来る。
俺が欲しいサポートも、お前なら判ンだろ」


『………』


「そもそも何でもするっつったろーが。さっきの借り、今から返せや」


此処まで言われてしまっては、断れる筈もない。
口許をきゅっと引き結び、大きく頷いた。













あの後クラスメイトに囲まれ、私達は無事にチームを組めた。
いや、薄々勘づいていたけれども、勝己がクラスメイトを覚えていないのはちょっと…アレだった。勝己はもう少し周りに目を向けるべき。
耐久性のある前騎馬は、自分からやって来た切島くん。
勝己の右後方は、テープの個性を持つ瀬呂くん。
そして左後方は私。


「十五分経ったわ。それじゃあいよいよ始めるわよ」


さて組もうか。そう思い動いた瞬間、勝己に無言で腕を取られた。
真顔で人の腕をじろじろ眺めたかと思えば、ぼそりと腹立たしい事を言う


「……小枝みてぇ」


『ぶん殴るぞ』


「いや、まぁその腕じゃあそう思われても…」


「爆豪が俺に体重掛ければ大丈夫だろ?」


『いやいや、私だって頑張れるよ』


右腕を横に出し、肘から下に氷のキャスターを取り付ける。
ちゃんと太い氷の柱だ。これなら勝己が乗っても折れない筈。
どうだと顔を向ければ、勝己は呆れ、瀬呂くんは苦笑い、切島くんは笑顔をくれた


「なんだその妙な器用さは…」


「ウケる、ちゃんとキャスター付いてる」


「凄ぇな白露!」


前二人の微妙な反応は無視だ。
三人で騎馬を組み、勝己を乗せる。明らかに靴を脱ぐ素振りがないのが気になるが、後騎馬である私のメインは、個性による妨害だ。
その為切島くんが勝己の足を乗せる係で、私が彼の手を下から掴む形になったのだが…せめて靴は脱ごう…?
無言で此方を見下ろしてきた勝己に、重くないよと笑い返しておく。


『一応角度を瀬呂くんに合わせたけど、座り心地どう?』


「…腕は」


『問題ない。爆破で飛んでも折れないよ』


「なぁせめて俺達にも作戦教えよう?
その言い方だとやっぱ爆破で飛んで奇襲だろ?おまけに開幕ブッパだろ?」


「それ以外の何があんだよ。察せや」


「協調性ー!!」


「白露!爆豪が言わずに飛ぶ時は俺達にも教えてくれ!」


『判った。思いがけない所で飛んでったらごめんね』


「大丈夫だろ、お前らテレパシー送り合ってるし」


「あ?どういう理論だしょうゆ顔!」


「瀬呂な!」


《さぁ起きろイレイザー!
十五分のチーム決め兼作戦タイムを経て、
フィールドに十二組の騎馬が並び立った!!》


《………なかなか、面白ぇ組が揃ったな》


《さァ上げてけ鬨の声!!血で血を洗う雄英の合戦が今!!
────狼煙を上げる!!!!》


頭上から降り注ぐプレゼント・マイクの声。
逸る心臓に、一度深呼吸をした


《よォーし、組み終わったな!!?
準備は良いかなんて聞かねぇぞ!!
────行くぜ!!
残虐バトルロワイヤル、カウントダウン!!》


ぐるりと取り囲む観衆からの視線を感じる。
静かに息を吐き出した


《3!!!》


「狙いは一つ」


勝己の声が、静かに落ちた。
それに一つ頷いておく。


《2!!》


「ビビってんなよ、刹那」


《1…!》


『勿論!』


《START!!!》











案の定、殆どの騎馬がとあるチームの許に殺到する。
此方も向かっている途中で、出久達のチームが宙を舞った。
それを見て、勝己がむっと顔を顰めた


『勝己』


「わーっとる!」


それから黙り込んだ勝己を二度見した。
いやこいつ指示は?
出さ…ない?え、黙るの?え???


《さぁまだ二分も経ってねぇが、早くも混戦混戦!!
各所でハチマキ奪い合い!!
1000万ポイントを狙わず、二位〜四位狙いってのも悪くねぇ!!》


仕方がないので、前進する切島くんに声を掛ける


『切島くん!出来るだけフィールド端に!』


「緑谷狙うんじゃねぇのか!?」


『狙うよ!ただ……』


《峰田チーム!
圧倒的体格差を利用し、まるで戦車だぜ!》


「俺が行く!!」


そう言うや否か、勝己が爆破で飛び出した。
周囲に敵騎馬が居ない場所を陣取り、飛んでいった勝己を目で追い掛ける


「言うのがギリギリ過ぎんだよ!!」


『言うだけマシ!』


「なんだアレホーミングミサイルかよ!!」


飛んだ勝己が、なんとか峰田くん達を振り切った出久に襲い掛かる


「調子乗ってんじゃねぇぞクソが!!!」


「常闇くん!」


一撃を食らいそうになった出久を、常闇くんの黒影が庇った。
…影、泣いてた?痛覚あるのか?
そう思いつつ、宙に投げ出された勝己を吹雪に乗せた。
そのまま此方に引き寄せる


『瀬呂くん』


「ほいきた」


大分飛んだ勝己をテープが届く位置まで戻して、あとは回収するだけだ。


「チッ」


「瀬呂、ナイスキャッチ!」


「白露、ナイスアシスト!」


『ありがと!二人ともナイス!』


《おおおおおおおお!?
騎馬から離れたぞ!?良いのかアレ!?》


「テクニカルなのでオッケー!地面に足付いてたらダメだったけど!!」


良かった、これがダメって言われたら此方の攻めが厳しくなってしまう。
ほっとしつつ、周囲に目を配る。
現状此方のポイントは動いていない。元が740ポイントだ。
周りの奪い合いの状況と騎手の首もとからして、まだポイントは散らばっている。
このまま出久のみ狙うなら、もう少し周りから取っておきたいけど────


《やはり狙われまくる一位と、猛追をしかけるA組面々、共に実力者揃い!
現在の保持ポイントはどうなっているのか────七分経過した、現在のランクを見てみよう!》


プレゼント・マイクが勢い良く叫んだ瞬間


《…あら!?》


《………》


《ちょっと待てよコレ…!
A組緑谷以外パッとしてねぇ…って爆豪あれ…!?》


『勝己!!』


背後から影が迫る。
気付いた時には既に、勝己からハチマキが奪い取られていた


「単純なんだよ、A組」


「んだてめェコラ返せ殺すぞ!!」


『……!!』


そこに居たのは知らない顔で、恐らくはB組の人間だろうと当たりを付けた。
表示されたモニターで名前を確認する。
物間というらしい彼は、此方を見て微笑んだ


「ミッドナイトが第一種目と言った時点で、予選段階から極端に数を減らすとは考えにくいと思わない?」


「!?」


「だから凡その目安を仮定し、その順位以下にならないよう予選を走ってさ。大体四十位以内ね。
後方から、ライバルになる者たちの個性や性格を観察させて貰った。
その場限りの順位に執着したって、仕方ないだろう?」


「クラスぐるみか…!」


「まあ全員の総意って訳じゃないけど、良い案だろ?
人参ぶら下げた馬みたいに、仮初の頂点を狙うよりさ」


「おい来るぞ!」


物間の作戦に賛同している騎馬が、此方に近付いてくる。
さてどうするか。取り返すには、物間の騎馬の足を止めるのがベター。
でも近付いてくる奴等が邪魔だ。
…先ずは、足留め係の騎馬を凍らせるか。
そう判断し、個性を使おうとした所で


「あ、あとついてでに君達、有名人だよね?」


示されているのに私も含まれている事に気付き、猛烈に嫌な予感がした。
制止する前に、物間は笑い混じりに嘲笑う


「“ヘドロ事件”の被害者!今度参考に聞かせてよ。
年に一度────敵に襲われる気持ちってのをさ」


『────、』


コイツ、何を言ってるんだろう。
あの時勝己が、私達がどんな思いをしたか、知りもしないで。
言葉を失った私の頭を、意識を引き戻す様に大きな手が軽く叩いた


「…刹那」


目が合い、察した。


『オッケー』


「切島、瀬呂…予定変更だ」


「?」


「は?」


勝己が両の手を構え、獰猛に笑った。


「デクの前に、こいつら全員殺そう…!!」














《さァ残り時間、半分を切ったぞ!!》
B組隆盛の中、果たして────1000万ポイントは誰に首を垂れるのか!!!》


出久の許に轟くんチームが向かったのを横目で見つつ、正面を見る。
拳藤だったか、B組の騎手が物間に苦言を呈した


「あんま煽んなよ物間!同じ土俵だぞ、それ」


「ああ、そうだね。ヒーローらしくない…それに良く聞くしね。
恨みを買ってしまったヒーローが────敵に仕返しされるって話」


いっそそこまで言えるのかと感心してしまった。
敵と称された我が幼馴染は、案の定キレている。
唸り声を上げる勝己に、堪らず切島くんが声を上げた


「爆豪落ち着け!冷静になんなきゃポイント取り返せねぇぞ!!」


『あーあ、御愁傷様』


「いやちょっと白露!?爆豪止めて!?」


『いいよいいよ。このまま行こ』


「はぁ!?」


『知ってる?バーサーカーって攻撃力アップするんだって』


「オイやめろ!!バーサーカーは防御捨てて攻撃オンリーだろ!!」


『騎馬がちゃんと防御に回れば平気平気』


「ダメだコイツら!!!」


拳を掌に打ち付け、爆破が起きる。
それからゆらりと、俯かせていた顔を上げた。
…まぁ予想通り、目は吊り上がっているけれど


「っし進め切島…!俺は今…頗る冷静だ…!!」


「頼むぞマジで…!!」















《何だ何した!?群がる騎馬を轟一蹴!》


その声の方に顔を向ければ、氷の壁が聳え立っていた。
あの中で出久と轟くんが当たっている様だ。
直ぐに顔を戻す。
掌を構え、勝己が物間の顔面に爆破を仕掛けようとした、瞬間


「ははぁ…へぇ!凄い!」


咄嗟に勝己の顔の前に氷の壁を形成する。
同じ様に向けられた物間の掌から────爆破が、放たれた


「良い個性だね!」


『勝己!』


「当たってねぇ!」


無事氷で防げたらしい。飛んでくる氷の欠片を払いながら、勝己が正面を睨んだ。


「俺の…!」


「爆豪!おめーもダダ被りか!!」


「クソが!!!」


すかさず右の大振りを叩き込む。
真正面から入った。
けれど────爆煙が晴れた先の物間は、無傷だった。


身体を、切島くんの様に硬化させた状態で。


「僕の方が、良いけどさ」


「んなああああ!俺の!?また被っ…」


「違ぇ、こいつ……コピーしやがった」


「正解!まぁ馬鹿でも判るよね」


コピー…という事は、一番触られたら不味いのは、攻撃力の高い勝己と、小細工に適した私か。
少なくともこれで、勝己と切島くんが触られた事になる。
これで個性を同時に使えたりしたら厄介。一度触る毎にコピー出来る枠が上書きされるのか。それとも制限時間でもあって、その間複数を使い放題なのか…
考えていたその時、先程近付いてきた敵チームの一人が、白いドロリとしたものを浴びせてきた。


「刹那!」


『ん!』


咄嗟に氷の壁を作るが、どろどろの液体は氷を乗り越えて此方に迫ろうとする。
どうやら此方が抗う限り、液体を出すつもりの様だ。


「凡戸!仕掛けて来たな」


「物間、あとは逃げ切るだけだ!
このポイントなら確実に四位以内に入る!!」


氷を三人の足場に集中させる。
足を脹脛まで覆った所で、その上を凡戸…名の通りなら、ボンドの個性だろうか。白い液体が覆った。


「固まった!?いや待て、これ…」


『二人とも、固まったフリしてて』


「!なるほど」


静かになった二人と共に、勝ち誇った物間が振り向くのを見た。
得意気に笑いながら、片手を爆破させ、彼は言う


「あ、怒らないでね。煽ったのは君だろ?ホラ…
宣誓で何て言ったっけ?あの恥ずかしいヤツ。えー…まぁ良いや、お疲れ!」


そう言い放ち、意気揚々と離れていく背中。切島くん達が慌てている中、勝己が低い声で呟いた。


「一位だ…」


静かに上を見る。
それから、小さく笑った。


「ただの一位じゃねぇ…俺が取るのは完膚無きまでの一位だ…!!!」


《残り時間約一分!!轟、フィールドをサシ仕様にし…そしてあっちゅー間に1000万ポイント奪取!!!
…とか思ってたよ五分前までは!!
緑谷はなんと、この狭い空間を五分間逃げ切っている!!》


出久も頑張っている。
私も負けていられない


「刹那!」


『行くよ!』


ばん!と内側から氷を破裂させ、ボンドを弾き飛ばした。


《逆転!!轟が1000万!!
そして緑谷急転直下の0ポイントーーー!!》


『!』


出久が取られた。
驚いたものの、直ぐ様手を構えた勝己を見て、慌てて声を上げる


『飛ぶ!!』


「はぁ!?」


「うおっ!?」


先程の倍の威力で飛んでいった勝己は、真っ直ぐに物間を目指す。
あれじゃあ幾らなんでも拾えない。私達も慌てて追い掛けた。
…その間に、静かに手首から下を雪に変えた。
手の代わりに腕から氷を形成し、切島くんにくっ付けて騎馬を続行する


《残り一分切って現在、轟ハチマキ四本所持!
ガン逃げヤロー緑谷から1000万ポイントをもぎ取ったぁ!!
上位四チーム、このまま出揃っちまうかぁ!?》


「待てえええええ!!待てって!!!」


物間チームの背中を捉えた所で、切島くんの声が聞こえたんだろう。
物間が呆れ混じりに口を開いた


「しつこいなぁ。その粘着質はヒーロー以前に人として…」


「勝手すなああああ爆豪!!!!」


そこで漸くB組が勝己を認識した。
自分達に迫り来る、男の姿を


「円場!防壁ガード!!」


「っしゃあ!!」


「刹那!!」


『任せろ!!』


円場と呼ばれた前騎馬の男子生徒が息を吐き出す。
すると、まるでその場に壁がある様に勝己が阻まれた


「って!」


「ハハ、見えねぇ壁だ!ざまぁ見ろ!」


勝己がそれに張り付いたのを見計らい────彼の身体の隙間を縫う様にして、氷の牙を幾つも叩き付ける。


見えないなら、勝己を張り付けて見える様にしてしまえば良い。


バリン、と見えない壁が割れた。
その隙間から、勝己が手を突っ込む。


「オラァ!!」


「取られた!二本!!」


《爆豪チーム、二本奪取で三位に!!
この終盤で順位が変わりゆく!若気の至りだぁ!!》


一度勝己を回収し、逃走を図る物間の妨害をする。
先程のお返しとして、きっちり足許を固めてやった


「よっし!このままキープを…」


「まだだ!!!」


切島くんの言葉を遮り、頭を叩きながら進めと怒鳴る


「完膚無きまでの一位なんだよ取るのは!!
さっきの俺単騎じゃ踏ん張りが効かねぇ!!刹那も此方に割けるのは二割だ!!行け!!!」


『あれ、バレてる?』


「はよやれ!!
俺らのポイントも取り返して、1000万へ行く!!!」


勝己の気迫に釣られてか、二人も笑みを浮かべた。
それを見て、私も笑う。
…よし、到達した。
あとはタイミングかな。


「しょうゆ顔!テープ!!」


「瀬呂な!っと!!」


氷を壊そうとする物間の横に、瀬呂くんのテープが伸びる。
その間に騎馬が崩れない様、三人の足を氷で繋いでくっ付けた。
前方に滑らかな氷を張った所で、勝己が笑う


『ぶちかませ!』


「行くぞオラァ!!」


勝己の両手から爆炎が噴き出し、固定された騎馬ごと氷の上を猛スピードで突進する。
そのまま目を丸くする物間に肉薄し────


《爆豪!!!
容赦なしーーー!!!!!》


無事、ポイントを取り返した。


《やるなら徹底!彼はアレだな!完璧主義者だな!!
さぁさぁ時間もあと僅か!!》


「次!!
デクと轟んトコだ!!!」


ハチマキを着けながら、勝己が此方に目を向けた


「刹那!まだか!!」


『待って!今出久が丁度良い動きしてる!』


《残り十七秒!此方も怒りの奪還!!》


『────来た!!!』


ずっと待った、チャンスだ。
雪にしていた手を実体化させ、此方に背を向けている轟くんの首からハチマキを一つ、奪った。


「!?」


「轟さん、ハチマキが!!」


素早く上空に退避し、氷の壁を抜ける。
逃げるついでに、近くに居た足場を固められ身動きの取れないチームからも、ハチマキを一つ奪っておいた


《なんだありゃ!?手が浮かんでんぞ!?1ーA葉隠か!?
でもどうやってあんな高さに…》


《いや、違うな》


《…んん!?
爆豪チーム、一気にハチマキ五本所持!!
…って事は、ありゃあ1ーA白露の仕業か!!フクロウになったり手だけ浮かせたり、マジシャンかよ!?》


「おお!?凄ぇ!!」


「ナイス白露!!」


『勝己!』


空中に浮かべた手で勝己の首にハチマキを掛けつつ、私は笑った。


『判りやすくしたよ、1000万!!』


本当はちゃんとポイントも見えていた。
でも敢えて、165ポイントのハチマキを奪ったのは。
意味を察した勝己が、にぃっと笑った


「────上等ォ!!!」


勝己が自分で、奪いたいだろうと思ったからだ。
目指すは正々堂々、完膚無きまでの一位の為に


《そろそろ時間だ、カウント行くぜ!
エヴィヴァディセイヘイ!10!》


「刹那!!」


『行け勝己!!』


轟くんの氷の隙間に自分の氷を潜り込ませ、砕く。


《9》


勝己が開けた穴に飛び込んだ


《8》


上鳴くんだろうか、放電している


《7》


勝己に向かう雷撃を、氷の礫でガードした。


《6》


切島くんが叫ぶ


《5》


出久が轟くんに向かった


《4》


勝己が轟くんに飛び掛かった


《3》


出久が手を伸ばした


《2》


轟くんが左手に一瞬、気を取られる


《1》


勝己が1000万に、手を伸ばして────


《TIME UP!!!》


地面に顔から落ちた。













《早速上位四チーム見てみよか!!
一位、轟チーム!!》


1000万は轟くんの首に下がったままだった。


《二位、爆豪チーム!!》


「っしゃ、お疲れ!!」


「やったな!!」


『お疲れ様!!』


悔しがる勝己を他所に、三人でハイタッチした。


《三位、鉄て…アレェ!?
オイ!!心操チーム!?
いつの間に逆転してたんだよオイオイ!!》


心操という聞き覚えのないチームが通ったというのを聞いて、目を向ける。
一緒に組んでいたらしい尾白くんは何処か浮かない顔だ。
気にはなったものの、最後の通過チームの発表を待った


《四位!緑谷チーム!!》


その瞬間、出久が噴水の様な涙を流した。


《以上4組が最終種目へ…進出だああーーーー!!》








走れ








刹那→借りを返した。
戦えば戦う程便利さが増す。ただし威力は低い。
小細工に適した個性。

爆豪→これでチャラ。
大暴れしたものの、一位じゃないのが不満。
刹那が便利になった事で、彼の強化フラグが立った。

切島→最終的に爆豪が刹那の名前を呼ぶだけで意思疏通を始めたので、テレパシーやべぇになった。

瀬呂→最終的に爆豪が刹那の名前を呼ぶだけで意思疏通を始めたので、頼むから判る様に指示をくれと思った。