17



二回戦、瀬呂くん対轟くんは轟くんが圧勝。
三回戦、上鳴くん対塩崎さんは塩崎さんの秒殺で幕を閉じた。
四回戦、飯田くんとサポート科の発目さんが始まる所で、腰を上げる。


『そろそろ行ってくるね』


「白露!頑張れよ!」


「刹那ちゃん、頑張ってね」


『うん、ありがとう』


声を掛けてくれる切島くんや梅雨ちゃんに手を振った所で、低い声が呼び止める


「刹那」


『なに、勝己?』


ゆっくりと振り向けば、座席の背に肘を付いて此方を見る勝己が居た。
静かに紅い目が瞬いて、口が動く


「ビビってんなよ」


『……ふふ、ありがとう』


私のヒーローに頑張れと言われたからには、無様な試合は出来ないのだ。











《五回戦!
多彩なバリエーションを魅せるスノーガール!ヒーロー科 白露刹那!
────VS!!!
輝きたいナルシスト!ヒーロー科 青山優雅!!!》


『宜しく、青山くん』


「ボクが勝っても恨みっこナシね☆」


『勿論』


静かに構える。
主審のミッドナイトが放送席に合図を送った。


《レディィイイイイ────START!!》


「先手必勝☆」


『だろうと思った!』


早速撃たれたレーザーを飛び上がって躱す。
青山くんは確か、一秒以上レーザーは撃てない。逆に言うと、一秒以下なら恐らく連射出来る。
ただ独特な構え…両手を頭の後ろに組む様な姿勢で個性を使う。
それを踏まえた、私の勝ち筋は


『おらぁ!!!』


「おうふっ!?!?!?」


吹雪での加速、からの────ノーガードのボディに一発。


綺麗に決まった上に、勢いも加算された一撃により、青山くんは場外に放り出された。
因みに拳は氷を纏っていたので、とても痛かったかもしれない。
動かない青山くんに、今更ながらに罪悪感を抱きつつ、勝ち名乗りを受けた


《瞬殺!!!まさかの左ストレート!!!
白露、二回戦進出!!!》












フィールドから通路に戻ると、控え室の扉に寄り掛かった勝己が居た。
ひらりと手を挙げると、厚い掌をぶつけられる。


『勝ったよ』


「たりめーだ。お前があんなのに負けっかよ」


当然の様に返してくれた勝己に、思わず笑う。素直に褒められるのは擽ったい


「……左手、痛めてねぇだろうな」


『大丈夫だよ。捻らず殴った』


「なら良い」


相変わらず心配性だ。
重なったままの手を握って、そっと口を動かした。


『お茶子ちゃん、強いよ』


「………」


『勝ってね』


「誰に言ってやがる。…ちゃんと見とけよ」


『うん』


するりと手が離れる。
そのまま私の髪をぐしゃりと掻き混ぜ、勝己は控え室に戻っていった。


六回戦、切島くん対鉄哲くん。
個性ダダ被りの両者の試合は引き分けとなった。
第七戦後に簡単なミニゲームを行い、それで勝者を決めるらしい。
そして、一回戦最後の組。


「次、ある意味最も不穏な組ね」


「ウチ、なんか見たくないなー…」


隣で梅雨ちゃんと耳�カさんが話す中、私はフィールドを見つめていた。


《一回戦最後の組だな…》


フィールドに上がった淡い金髪。
ゆるりと頭が持ち上げられ、紅い目が真っ直ぐに此方を射抜く。


「爆豪ちゃん、何か言ってるわね」


「なんだろ?流石に周りがうるさくて聞こえなかったな…」


耳�カさんがぼやいたけれど、きっと勝己は声には出してなかっただろう。
小さく四回動いた唇に、私も口を動かした。


────見とけよ。


確かに勝己から紡がれたメッセージ。
声もなく返した言葉に、勝己は満足そうに目を細め、正面を向いた。


《中学の頃からちょっとした有名人!堅気の顔じゃねぇ!!ヒーロー科 爆豪勝己!!
────VS!!!
俺コッチ応援したい!ヒーロー科 麗日お茶子!!》











────見てるよ。


菫青の瞳が俺だけを真っ直ぐに見て、唇はそう紡いだ。
懸命に向かってくる女は刹那のダチだ。それでも、戦場に情けはありゃしない。


「おらああああああああ!!!」


何度も突進してくる丸顔の目は死んじゃいない。何かを、狙っている。


「まだまだあああああああああ!!!」


爆破しても爆破しても向かってくる丸顔を、只管に迎撃する。
周囲は俺の爆破で巻き起こされた煙幕で見えにくい。
飛ばされては向かってくる丸顔の個性は、浮かすヤツだった筈だ。
俺に触れて場外を狙っているのは判るが────他に何を、狙ってやがる


「おい!それでもヒーロー志望かよ!!
そんだけ実力差あるなら早く場外にでも放り出せよ!!
女の子甚振って遊んでんじゃねぇよ!!」


「そーだそーだ!!」


────クソウゼェ。
その一言に尽きた。
外野の野次を聞き流していれば、喚いていた実況の声が、相澤先生に突然変わる


《今遊んでるっつったのプロか?何年目だ?
シラフで言ってんならもう見る意味ねぇから帰れ。帰って転職サイトでも見てろ。
────此処まで上がってきた相手の力を、認めてるから警戒してんだろう》


切れ味鋭い一撃で、会場が静まった。


《本気で勝とうとしてるからこそ、手加減も油断も出来ねぇんだろうが》


────お茶子ちゃん、強いよ。


アイツの言葉が脳裏を過る。
ふらついてはいるものの、頬の汗を拭う丸顔の目はまだ死んでねぇ。


何かを、狙っている。


ヤツがどう動いても良い様に、腰を落として睨み付けた。
警戒を続ける俺の前で、丸顔がぽつりと言葉を落とす


「そろそろ……か…な…」


────来る。


「ありがとう、爆豪くん……油断してくれなくて」


丸顔が両手を合わせた。
その瞬間────頭上から夥しい数の瓦礫が降り注いだ。
同時に前方の丸顔が、自らに手を触れさせたのが視界の端で見えた。
そのまま、此方に突っ込んでくる


────俺がこの攻撃を凌ぐ際に見せる隙を突くのが狙いか。


ああ、そうかよ。
確かにこれは読めてなかった。
ただし────


────勝ってね。


そう言われちゃ、勝つしかねぇだろ。
まぁ、言われんでも俺が勝つのは決まってるが。


────BOOOOOOOOOM!!!


「デクの野郎とつるんでっからな、てめェ。なんか企みあるとは思ってたが…刹那の言った通りだ。油断しなくて正解だった」


《会心の爆撃!!
麗日の秘策を堂々────正面突破!!》


最大威力を出した左手が鈍く痛む。
一度大きく息を吐いて、吹っ飛ばされたにも関わらず、また立ち上がった女を見据えた。


「────良いぜ。
こっから本番だ、麗日」


まだ向かってくると言うのなら、叩き潰すまで。
口角を吊り上げ、本格的に迎撃すべく構えた所で────丸顔は、崩れ落ちた。
此方に掌を向けながら、ミッドナイトが駆け寄る。
倒れながらも立ち上がろうとする丸顔を暫し見つめ、主審が判定を下した


「麗日さん、行動不能。
二回戦進出、爆豪くん────!!」











「おーう、なんか大変だったな悪人面!」


「組み合わせの妙とはいえ、とんでもないヒールっぷりだったわ爆豪ちゃん」


「うるっせぇんだよ黙れ!!」


応援席に戻って来れば向けられるウゼェ声。
イラつきも隠さず返せば、アホ面がしゃあしゃあと言葉を吐き出した。


「まァーしかし、か弱い女の子によくあんな思い切りの良い爆破出来るな。
俺はもーつい遠慮しちまって…」


「完封されてたわ上鳴ちゃん」


「…あのな梅雨ちゃん…」


『そもそも女の子だからか弱いって決め付ける奴はちょっと…』


「白露?えっ、白露は爆破肯定派なの!?」


どかっと刹那の隣に腰を降ろす。
ぽんぽんと小さな手が労う様に頭に触れたかと思えば、鈍く痛む左手を包んだ


『女だからって理由で全力出して貰えないのはさ、ムカつくよ』


「わかる。ウチも女だからって舐められたらムカつく」


「そうね。性別で手加減されるのは嫌だわ」


「えぇー…そっち三人爆豪派なワケ…?」


ひんやりとした手に包まれ、痛みが少しずつ和らいでいく。
アホ面の間抜けな声を聞き流しながら、ぽつりと呟いた


「何処がか弱ェんだよ」


か弱ェ女は何度も爆破されて立ち向かって来ねぇし、人の頭の上から瓦礫降らせたりしねぇ。
独りごちた台詞を拾って、刹那がくすりと笑った


『お疲れ様。強かったよ、勝己』


掌にぽん、と柔い手を打ち付けて来たのは、ハイタッチの代わりのつもりだろうか












『次、出久と轟くんか…』


「フン、どうせ全身バッキバキの自滅試合だろ」


『骨折らずにどうにかしてほしいな…』


「骨折って死ね」


『こらこら』


出久の個性は強力過ぎる故か、使った代償に自身にダメージがいってしまう。
幾らリカバリーガールが居るとはいえ、彼女の個性は対象の体力を使った治癒力の活性化だ。治療を何度もしてもらえば、それに応じて体力を消費する。
何より…出久のあの戦い方だと、いずれ綺麗に戻らない傷を負いそうだなんて思ってしまうのだ。


《今回の体育祭、両者トップクラスの成績!!
正しく両雄並び立ち────今!!!》


向かい合う二人を静かに見つめる。
どうか、酷い怪我をしません様に。
…そう願ったのが、間違いだったのだろうか


《緑谷VS轟!!
────START!!!》













『……っ』


「うわ、また行ったな…ウチもう見たくないんだけど」


「ケロ…」


「………」


襲い掛かる氷と、それを砕く一撃。
開始直後からずっと、出久は指を砕きながら轟くんの攻撃を防いでいた。


《まーた破ったあああ!!!!》


迫り来る氷をデコピンの衝撃波で防ぐ。
その代償に────指がまた一本、あらぬ方を向いた


「…外、出とくか?」


『…大丈夫』


冷やす為に握っていた勝己の手を、気付けば縋る様に両手で握ってしまっていたが、勝己は何も言わなかった。
紅い目は窺う様に此方を見て、それからまた試合に戻される。


「げっ、始まってんじゃん!」


その声の方に顔を向ける。延長戦の勝者である切島くんが戻ってきた様だった。


「お、切島!二回戦進出やったな!」


「おー、ありがとな上鳴!
そうよ、次おめーとだ爆豪!」


「ぶっ殺す」


「ハッハッハ、やってみな!!」


強気に返したものの、切島くんは自分の掌に目を向けて呟いた


「…とか言っておめーも轟も白露も、強烈な範囲攻撃ポンポン出して来るからなー…」


「な」


…ポンポン、か。そう見えるのか。
静かに熱の落ち着いてきた大きな手を見つめる。
私に左手を預けたまま、勝己は眉を寄せて口を動かした。


「ポンポンじゃねぇよ舐めんな」


「ん?」


「筋肉酷使すりゃ筋繊維が切れるし、走り続けりゃ息切れる。
“個性”だって身体機能だ、奴にも何らかの限度はある筈だろ」


勝己で言うなら爆破の威力上限。
私で言うなら使い過ぎによる身体の凍結。
氷という系統被りで考えるなら、轟くんも霜が降りたりするんだろうか


「刹那」


『ん?』


「お前はアイツの限度、どう見る」


そっと耳打ちされ、目を細めた


『…私と近いなら、予めMPが決まってて、それを使って氷を出してそう。
私だと、MPが残り半分くらいになったら身体に霜が降りたりするけど』


「…お前に近いってのは有り得るな」


そう呟いて、勝己が座り直した。
身体を寄せてくれた彼に、そっと感謝する。
出久の試合は、あまりにも心臓に悪いから。


「考えりゃ、そりゃそっか…じゃあ緑谷は瞬殺マンの轟相手に…」


「耐久戦、狙ってんだろうな」











「────全力で!!!掛かって来い!!!!」


声が響いた。
既に両の指は赤黒く腫れ上がり、呼吸するだけで飛び上がる程痛い筈なのに。
そんな手で、指を頬に引っ掛けて、更に超パワーを使った。
軋む手で拳を握り、出久は轟くんを睨む


『出久…』


身体に霜が降りた轟くんの動きが鈍くなっている。
恐らく私と同じで、一定量使えば身体機能が低下するのだ。


「…お前の推測、当たったな」


ぽつりと呟かれ、頷く


「多分あの野郎もお前と同じでMP型だ。範囲は恐らく、しょうゆ顔の時に見せたアレが最大値」


『……でもあの人、左で炎出せるんでしょ?それを使えば弱点なんて…』


「……半分だけで勝とうなんざ、舐めプ過ぎて笑えもしねぇわ」


『勝己?』


半分だけでって、何だろう。
問い掛けようとした合間を縫って、プレゼント・マイクの声が突き刺さった


《モロだぁーー!!!
生々しいの入ったーーー!!!》


『!』


「あの手で殴って大丈夫かしら、緑谷ちゃん」


「緑谷、めちゃくちゃだな…」


梅雨ちゃんと耳�カさんの声が、遠い。
沸き立つ観衆の声も、今じゃ雑音にしか聞こえない。
変色した手で轟くんを殴り飛ばした出久の拳から、血が滴っていた。


普段の出久からは想像出来ない様な、鬼気迫る表情。
今の出久は、勝ち負けよりも他の何かを目的としている様に見えて────その為なら両の指すら犠牲にするその姿勢が、とても恐ろしく思えた。


「……見なくて良い」


静かな声がそっと鼓膜を揺らし、後頭部に硬い掌が回された。
引き寄せられ、勝己の左肩に額を押し付ける形になる。抱えたままの左手も、そっと私の手を握ってくれて、勝己の優しさに涙が出そうだった。


「君の力じゃないか!!!」


勝己に寄り掛かったまま、出久の訴える声を聞く。
必死に語り掛ける出久の言葉が、轟くんに響いたのだろうか。


歓声が、上がった


「焦凍ォォォォォォ!!!!
やっと己を受け入れたか!そうだ!良いぞ!!
此処からがお前の始まり!!
俺の血をもって俺を超えて行き…俺の野望をお前が果たせ!!!」


低い声が高らかに響き、思わず肩を震わせる。
発言から考えて、轟くんのお父さんだろうか。顔を上げようとした所で、後頭部に添えられたままの右手に力が込められた


「クソが…胸糞悪い」


『勝己?』


「…忘れろ。今のオッサンの言葉なんか、お前にゃ必要ねぇ」


『……轟くんのお父さんって、エンデヴァーだっけ?勝己、エンデヴァー嫌いだったの?』


「嫌いになりそうだ」


『ふぅん…?』


良く判らないが、今は好きじゃないらしい。
離してくれそうにないので目を閉じていれば、突然両腕でぎゅうっと抱き込まれた。
驚いて目を開けたその時────フィールドの方から、爆風が吹き荒れた。


『うわ…っ!』


「掴まってろ!」


「きゃああ!!」


「何コレェェェ!!!!」


ごうごうと吹き荒ぶ風の遠くで、クラスメイトが悲鳴を上げている。
脚が風に煽られ浮き上がるのが怖い。
勝己にしがみつきつつ、暴風が止むのを待った。


どれ程経っただろうか。
漸く風が落ち着いてきた所で、そっと目を開ける。


《何今の…お前のクラス何なの…》


《散々冷やされた空気が瞬間的に熱され、膨張したんだ》


恐る恐るフィールドに目を向けた。
四角い闘技場には濛々と煙が立ち込め、様子を窺う事は出来ない。


《それでこの爆風てどんだけ高熱だよ!
ったく、なんも見えねぇ…オイこれ勝負はどうなって…》


『あ……』


煙が途切れる。
壁からずるずると滑り落ちる、緑の髪が見えた。
俯いた彼は重力に逆らう事もなく、そのまま地面に倒れ込む。


「緑谷くん……場外」


フィールドには、大きく息を乱してはいるものの、まだ戦えそうな轟くんが残されている


「轟くん────三回戦進出!!!」


倒れて動かない出久の姿を呆然と見つめる。
遠くから、落胆する様な無責任な観客の声がした。


「デっ、デクくん!」


「緑谷くん!なんて無茶を…!!」


「オイラも行くぜ!」


「私も行くわ。刹那ちゃんは…」


「コイツはほっとけ。行くならテメェらで勝手にしろや」


皆の声も、硝子を隔てているかの様だ。
勝己に抱えられたまま、ロボットに搬送されていく出久を見送る。
完全にフィールドから見えなくなった所で、静かに顔を覆った。
ぽん、と頭に掌が乗る


『………出久、勝ち負けより轟くんを選んだんだね』


「自己犠牲万歳のクソだかんな」


『……心配って、しちゃいけないのかな』


「お前が泣かされるだけなら止めとけ」


『…引子さん、泣いてないかな』


「噴水みてぇに泣いてんじゃねぇの」


ぽん、ぽん、と宥める様に手が動く。
勝己の優しさに暫く甘えた。
流れる雫を拭い、涙が止まった頃にそっと胸を押した。
直ぐに腕は離れ、静かに紅い目が覗き込んでくる。


「……外出るか」


『大丈夫。…でも、今出久の様子見に行ったら泣いちゃうから、行かない』


「そうしろ」


『ありがとう、勝己』


「ドーイタシマシテ」















フィールドの大規模破壊により、二回戦第二試合は少々遅れる事になった。
私は第三試合、相手は常闇くんだ。
早いけど、もう下に降りようか。
そんな事をぼんやりと考えていると、隣から手を引かれ、立たされた。


『勝己?』


「行くぞ」


そのまま手を引かれる。
移動を開始した私達に気付いたのか、上鳴くんに声を掛けられた


「爆豪、もう行くの?早くね?」


「方向音痴の御守りだ」


「白露方向音痴なん?いやでもそっからそこだぜ?
幾ら方向音痴でも行けるだろ」


「方向音痴舐めんな。一回上手く行けたからって、二回目も行けるたぁ限らねぇんだよ」


「自信満々に貶してやるなよ」


勝己に手を引かれ、応援席を出た。
そのまま手頃なベンチまで行くと、腰を降ろす。隣に座れば、静かな声が鼓膜を揺らした


「…鳥野郎の対策、行けんのか」


『…黒影、だっけ。アレ、勝己の爆破の時に泣いてた。あと上鳴くんの時も悲鳴が聞こえた。
でも他はそんなにダメージ食らった様子もなかったし…』


右手を包む温もりをにぎにぎしつつ、片手で顎を擦った。
八百万さんの時は、盾を出す途中で黒影が押し出し勝った。つまり、彼女に何もさせず終わらせた。


『八百万さんを力押しで行ったのって、もしかして八百万さんが弱点を作れるから…?』


瞬殺する理由としては、単純に実力差、それか相手が何かする前に終わらせる、という可能性が高い。
静かに足許に目を向けた。
影…小説なんかで良くある設定としては、光が苦手だけど…
…いや待て。黒影が泣いていたのは勝己と上鳴くん…二人の個性の共通点は…


『……勝己』


「ん?」


私に合わせて手をにぎにぎする勝己にそっと目を向ける。
凪いだ表情の彼を真っ直ぐに見て、私は笑った


『確証はないけど、やってみる』










君が為











刹那→指が折れる度に目が死んでいく。
常闇戦で閃いたのは爆豪のお陰。
閃きを持てるほど冷静で居られるのは爆豪のお陰。

爆豪→指が折れる度に顔を険しくしつつ、轟の分析を続けた。
エンデヴァーを嫌いになりそうなのは、もしかしたら刹那があの家の娘になる未来があったかも知れないから。
刹那を抱えている時に誰も話し掛けて来なかったのは、この人が睨みを効かせていたから。