Secret Friend

私は目の前で揺れる見事な三つ編みを眺めて呆然とするしかなかった。うわー、この三つ編み性格出てるなー超綺麗じゃん。マクゴナガルさん絶対A型だわー。私?知らないよ。魔法使いに血液型とかの概念ないし。でも前はO型だったからO型な気がする!

「聞いているの?Ms.ブラック?」

すみません、現実逃避していました。まさか、ハリポタ界頼りたい大人No.1(当社調べ)のあなたが同級生だなんて思ってなかったんです。

「ごめんなさい、Ms.マクゴナガル」

いや、ほんと申し訳ないです。人の話聞かないのはいけない事だよね。そんな私にため息吐きつつ、もう一度説明してくれる、マクゴナガル先生素敵です!今度はちゃんと聞きます!

「こうやって、箒の上に手をかざして…上がれ!って言ってみて」

おお!箒がマクゴナガル先生の手の内に!!
マクゴナガル先生のお手本通りに私も箒の上にてをかざして言ってみる。
が、箒はピクリともしない。

「んー…」

現状を把握しらしい彼女は少し考え込んでいる。ほんとごめんなさい。箒との相性が壊滅的に悪いのです、私。

「ねぇ、もしかしてあなた、箒が怖いの?」

「え?」

箒が怖いかと聞かれれば、それは怖い。だって箒に乗って空飛ぶんだよ?あんな不安定な棒にバランス取りながら乗って、その上地上数十メートルとか飛ぶんだよ?逆に皆さん何故怖くないの。落ちたら死ぬよ?冗談じゃなく。私は初めて箒に乗った時から某宅急便の彼女を尊敬している。すごいよね、海渡ろうとか、ほんと。

「ごめんなさい、失礼だったかしら。」

なかなか答えない私に今度はマクゴナガル先生が申し訳なさそうにしている。違う、違うそうじゃないよ!

「いえ、こちらこそ、いつまでも答えなくてごめんなさい。全く失礼なんかじゃないわ。…そうね、確かに私、箒が怖いわ。」

私の答えに彼女はようやく納得したようだ。

「あなた、兄弟はいる?」

「え、えぇ、弟が二人。」

ん?私たちは今、箒の話をしていなかった?

「私も弟がいるのだけれど、弟が赤ちゃんの時お母さんが抱っこさせてくれたの。だけど、当時の私は小さな弟を抱っこするのが怖くて、私が抱っこしている間弟はずーっと泣いていたの。」

それは私にも経験がある。初めてアルファードを抱っこした時は随分と泣かれたものだ。今思えば、怖さ故に随分と不安定な腕だったからアルファードも不安だったのかもしれない。

「えっと、だから、あなたが怖がるからきっと箒も怖がるの。沢山抱っこしたら、弟も泣かなくなったでしょう?それと同じ。」

なるほど、そういうことか。私が怖がるから箒も不安で怖いのか。

「わかったわ。なるべく怖がらないように、箒を不安にさせないようにやってみる。」

不安なのは私だけじゃない。私が不安そうにしているから箒も不安になるんだ。

「上がれ」

心を落ち着けて、努めて優しく言った。大丈夫、怖くない。
すると、手に箒の柄がやってきてくれた。

「で、できた…?」

嘘でしょう?箒が私の手の中にある!!

「やった!やったわね!Ms.ブラック!!」

マクゴナガル先生もまるで自分のことのように喜んでいる。

「えぇ!ありがとう!Ms.マクゴナガル!」

ただ箒が上がっただけなのに、手を取り合って大げさに喜ぶ私たち。

「私は何もしていないわ。Ms.ブラックが頑張ったからよ。」

「そんなことないわ、Ms.マクゴナガルがいなければ、私、ずっと箒に乗れていないわ。」

「あら、まだ箒には乗れていないわよ。」

和やかな空気が二人の間に流れる。

「それと、さっきからMs.マクゴナガルって長ったらしいわ。ミネルバでいいわ。あ、あなたもし良ければだけれど。」

マクゴナガル先生はこれまでのやり取りで私がブラック家だということを忘れていたらしいが、突然思い出したようで、最後の方は随分自信なさげだ。そんな気を使わなくてもいいのに。
そうか、これがお父様が言っていた『ブラック』であることなのか。覚悟はしていたが、やっぱり少し寂しい。けれど私はここで、色んな選択をしながら生きていかなければいけない。自分の責任で。それが出来なければ、未来の家族を守ることなんてできやしないだろう。これはその第一歩だ。

「もちろんよ。そうね…ミネルバだから、ミニーなんてどうかしら?私のことも好きに呼んで!」

私の答えに照れくさそうに笑っている。

「ミニーなんて、初めて言われたわ。あなたはヴァルブルガよね?…それなら、ルビーはどう?」

おぉ!みんな私のことを「ヴァル」って呼ぶから新鮮だ!

「わぁ!初めて呼ばれたわ!寮は違うし、私は家のことがあってあまり表立って仲良くはできないかもしれないけれど、あなたは私の他寮での初めての友達よ!よろしくね、ミニー!」

「えぇ、あなたの事情は何となく分かるわ。だから、そうね…秘密の友達になりましょう。私にとってもあなたは他寮での初めての友達よ!よろしく、ルビー!」

こうして私とミニーは秘密の友達となった。

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