扉をあけてこんにちは
結論から言うと、新しいお父さんは不器用だけどとてもいい人だった。
多忙なお仕事らしく、朝から晩まで家にいないそうだ。息子の飛雄君はお父さんに似て不器用な子だと思う。彼は小学生の時からバレーボールをしているらしく、育ち盛りの飛雄君にとってもいつも家にいる母さんという存在ができることはいいことなんだろう。食生活も安定するし。

「飛雄君、この荷物ここでいい?」

「・・・はい。あざっす。」

「ううん、いいよー」

不器用な飛雄君とは私も梓もあまりコミュニケーションが取れていない。そりゃ突然姉と妹ができたら誰でも混乱するだろう。だから初めて会ったとき飛雄君には無理に姉だとか妹だとか思わなくてもいいし、私のこともお姉ちゃんだなんて呼ばなくてもいい、と伝えてはおいた。

「そういえば、彩月ちゃんはどこの高校に入ることになったんだ?」

夕食の席でお父さんが唐突に聞いてきた。梓は中学入学と同時にこっちに来たので転校にはならなかったが、私は再婚の話が出た時点で高1だったので転校することになっていた。

「青葉城西高校です。あ、私立ですけど、一応特待で入れたので、多少は学費も安くなるとは思います。」

「そんなこと、気にしなくても良かったのに。だけど、特待生ってすごいな。頭いいんだな。」

「いえ、たいしたことないです。勉強しなかったら全然。」

転入という形になると受け入れてくれる学校は少ない。それに主に私立高校だ。学費は馬鹿にならない。さすがについ最近父親になったばかりの人に私立の学費を全額出してもらうなんて申し訳なさすぎる。青葉城西高校はこの近くで転入生でも試験の結果次第で学費免除の特待生として受け入れてくれる学校だったので、それはもう必死で勉強したのだ。

「飛雄なんてバレーばっかりで全然勉強しないからな。今年は受験なんだから、少しは勉強しろよ、飛雄。」

「分かってるよ。」

「でも、飛雄君ならスポーツ推薦くるんじゃないの?凄くバレー上手だって聞いたし。それに勉強なら彩月がいるから教えてもらえばいいじゃない!」

「私でいいなら、梓にも時々教えてるし。」

なるほど、飛雄君はそんなにバレーが上手なのか。今度梓と試合観戦にでも行こうかな。

「お兄ちゃん、そんなにバレー上手なんだ!今度お姉ちゃんと応援に行ってもいい?」

「お、おう」

飛雄君は梓に『お兄ちゃん』と呼ばれることに慣れていないらしく戸惑いが隠せていない。
これからゆっくり家族になっていければいいな…






2015.06.18

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